◆環境・防災◆  ポリ臭素化系難燃剤を簡便に分析
 ポリ臭素化系難燃剤の使用が本年 7 月の RoHS 指令の発令で禁止された。一方、発令以前に製造された電気製品や輸入品に混入されている可能性があり、迅速・簡便な判定法の開発が急がれている。本研究では、シリコンウエハ上にゲルマニウムのナノドットを成長させ、その表面に試料を塗布したものにレーザー光を照射すると、簡単にポリ臭素化ジフェニルエーテルの質量スペクトルが得られることを明らかにした。測定時間はわずか 1 分程度であり、今後広く普及する可能性がある。

【P2029】     ナノドットイオン化質量分析法による臭素系難燃剤の分析

(産総研環境管理・函館高専1・産総研エネルギー技術2)○佐藤浩昭・清野晃之1・山本 淳2・田尾博明
【連絡者:佐藤浩昭,竜話:029・861−8302】

 プラスチック材料は、身の回りで様々な用途で利用されているが、燃えやすいという大きな欠点がある。そこで、火災を防止するために、プラスチック部材には、高い難燃効果を発現する臭素系難燃剤が用いられていることが多い。一方、臭素系難燃剤は、人体や自然環境への悪影響が懸念されている。欧州連合では、特に悪影響が懸念されるポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)が加えられた電気・電子機器の輸入と使用を、今年7月から禁止した(RoHS指令という)。我が国では業界の自主規制によってPBDEはほとんど使用されていないが、自主規制以前に製造されたプラスチックのリサイクル品や、諸外国から輸入したプラスチック部品にPBDEが含まれている可能性があり、PBDEが含有されているか否かを迅速・簡便に判定する手法の開発が強く求められている。しかし、PBDEは分子量が高く、しかも分解しやすいため、その分析は容易ではない。
 最近、我々は、シリコンウェハ上に直径数十〜数百ナノメートル(ナノは10億分の1)のゲルマニウムドットを成長させた「ゲルマニウムナノドット基板」に試料を塗布し、レーザー光照射するだけで、様々な高分子量化合物を分解せずにイオン化できる質量分析技術を開発した。本研究では、この方法を用いて、PBDEを簡単に分析することに成功した。RoHS指令では、10臭素体であるデカブロモジフェニルエーテル(DecBDE)が規制から除外されたため、PBDEに結合している臭素の数の違いを識別して評価する必要が生じたが、この方法では、その違いを質量の違いによって簡単に見分けることができる。例えば、工業製品として用いられているDecBDEに不純物として含まれる、規制物質である7〜9臭素化体のPBDEを検出することができた(図参照)。現在用いられている分析法では、測定に1時間程度必要であるが、我々が開発した方法は、わずか1分程度で測定できるため、PBDEの迅速・簡便なスクリーニング手法への応用が期待できる。