◆新素材・      微少サンプル量でナノ粒子径を計測する方法を開発
 先端技術◆

ナノ粒子に関する研究が幅広い分野で盛んである。直径 10 nm 以下のナノ粒子は少量での粒子径測定が要求されるが、従来 0.1 mL〜1 L 程度のサンプル量が必要であった。本研究では、1 μL 以下の微少サンプル量で粒子径を測定する方法を開発した。周期電極を形成した微小容量セル中のサンプル溶液に交流電界を印加すると、誘電泳動によりナノ粒子に濃淡を生じる。電界印加停止後にナノ粒子の拡散速度が粒子サイズに依存することをつきとめ、レーザー光を当てた時の回折光を利用して測定する。この方法は、大量生産できない試料や生体分子の研究への応用が期待できる。

D3009】           誘電泳動を用いたナノ粒子径計測

(島津基盤研1 島津分析試験機BU 2) ○和田幸久1・十時慎一郎2・綱澤義夫1・森谷直司1
[連絡者:和田幸久, 電話:0774-95-1660]

 半導体産業を始め、化学工業、創薬、バイオテクノロジーなど広い分野で、ナノ粒子の生成および応用に関する研究が盛んである。直径10nm以下のナノ粒子は大量に生産できないものもあり、少量での解析が要求される。しかし液中における10nm以下の粒子径計測法には動的光散乱法がよく用いられるものの、市販されている装置の多くは0.1mL〜1L程度のサンプル量を必要とする。そこで我々は、1μL以下のサンプル量で粒子径を測定できる新たな方法を開発した。
 下図左のように、微細加工技術を用いて周期電極を形成した微小容量セルにナノ粒子を含むサンプル液を満たし電極に交流電界を印加すると、粒子は誘電泳動により電極エッジ部に集まる。空間周期的な濃淡の生じた領域は密度回折格子として機能するため、レーザー光を入射すると回折光を生じる。印加を停止すると粒子の自由拡散が始まり、この回折光は徐々に消滅するが、回折光が減衰する速さは粒子サイズに依存する。このため回折光の減衰速度から粒子径を求めることができる。本法により、直径5nm〜80nmのコロイダルシリカの粒子径計測に成功した(下図右)。
 誘電泳動技術を用いることで少ないサンプル量でも解析が可能であり、大量に生産できない貴重なサンプルや摂取が困難な生体分子の研究への応用が期待できる。