◆新素材・      タンパク質を瞬時に赤く染める試薬を作る
 先端技術◆

生命活動にとって重要な働きを担うタンパク質を網羅的に解析する、プロテオーム研究が目覚ましい進展を遂げている。タンパク質を分析するには、電気泳動分離の後に色素で染色する手法が一般的であるが、従来の染色試薬では多大な労力と時間を要していた。本研究では、タンパク質の共存で瞬時に赤色の蛍光を発し、溶液が青色に変色する新しい試薬を開発した。本試薬を用いると、従来一晩かかっていた染色操作を 30 分程度に短縮させることも可能であった。目視によっても分析が可能であることから、手軽で高感度なタンパク質の分析が実現した。

P1038】        タンパク質分析用新規蛍光および比色分析試薬の創製

(産総研バイオニクス) ○鈴木祥夫・横山憲二
[連絡者:鈴木祥夫、電話:0426-37-5980]

 タンパク質は、生命現象に必要な三大栄養素の一つであり、酵素反応、免疫反応さらには細胞内の種々の機能発現や制御の中心的な役割を果たすなど、生命活動を維持するための重要な働きを担っている。最近では、タンパク質を網羅的に解析するプロテオーム研究が、目覚しい進展を見せており、ゲノム解析などでは明らかにできない生命現象を解析する方法として、極めて重要な位置を占めている。タンパク質を分析するための試薬は幾つか市販されているが、これらの試薬は、i)タンパク質との反応時間が長いこと、ii)試薬の会合の問題、iii)応答値がタンパク質の構造に大きく依存すること、など幾つかの短所を持っている。また、タンパク質を分離・分析し、プロテオーム研究においても重要な役割を果たす電気泳動(SDS-PAGE)の場合、分離されたタンパク質を検出するために、タンパク質を色素で染色する操作が採られている。しかし、従来の試薬では、タンパク質を染色するための操作に、多くの手間と時間を必要とすることが問題視されていた。

 本研究では、上記問題点を解決し、フェノール誘導体またはピラン誘導体を用いた2種類のタンパク質分析用試薬を開発した。試薬の特徴として、1) 試薬単独では、光を発しないが、水溶液中で試薬とタンパク質を混ぜると、瞬時に赤色の光を発する、2) 光の発光と同時に、溶液の色が赤色から青色へと変色する、3) 機械を使った定性・定量分析だけでなく、目視によっても分析を行うことが出来る、ことが挙げられる。さらに、電気泳動によって分離されたタンパク質の染色操作を行ったところ、従来、一晩近くかかっていた操作時間が、開発した試薬(ピラン体)を用いた独自の手法を採ることによって、わずか30分で終了した。このような試薬を用いることによって、手軽にかつ高感度でタンパク質の分析が可能となる。