◆医療・生命◆ ストレス度を簡便に測れる分析用 CD の開発

ストレスは個人差や日内変動が大きく個人の特性を考慮した簡便かつ迅速な計測が不可欠である。本研究ではストレス度を測定できる酵素免疫学的測定法による CD 型流体装置(ラボ CD)を開発した。ストレスマーカーとして分泌型イムノグロブリン A を用い、その抗原を固定化したガラスビーズをラボ CD 内に組み込み、また試料や試薬の送液にはラボ CD の遠心力を利用し、その回転数により流れをコントロールできるようにした。本装置は1μL の微量試料を迅速かつ簡便に測定できるため、日常の健康管理への応用が期待できる。

E2001】      ストレス計測用遠心力駆動Lab-on-a-CDの開発

(産総研・神戸大1)○永井秀典・大瀧未来1・成田友佳1・斎藤惠逸1・脇田慎一
[連絡者:永井秀典,電話:072-751-9953]

 ストレスの客観的評価技術の確立は、年々増大する鬱や自殺の予見に関する研究のみならず、快適性の指標としても利用でき、製品開発の観点から家電、自動車、住宅メーカー等により強い要請がある。しかし、ストレス応答は個人差・日内変動が大きく、経時的な追跡に基づいて、個人の特性を考慮した計測が不可欠である。ストレスマーカーとして、唾液中の分泌型イムノグロブリンA(s-IgA)が報告されており、ストレス負荷により濃度が減少する。s-IgAの定量には、酵素免疫測定(EIA)法が利用されるが、長い測定時間や煩雑な操作が必要なことから、日常の計測に適していない。そこで、微小化による界面反応の迅速化を利用したEIA用CD型流体デバイス(ラボCD)の開発を目指した。
 本研究では、抗体固定化ガラスビーズを用い、試料溶液及び試薬の送液には、極微量の溶液操作に適した遠心力を利用した。モールド法によりポリジメチルシロキサン(PDMS)製ラボCDを作製し、標準s-IgAを固定化した直径1 mmのガラスビーズを、ラボCD上のリザーバー中で配置した(下図)。各リザーバー間の流路断面積に差を設けることにより、回転数の大小によって流れのオン・オフが可能であり、回転数のプログラムによって、一連の分析操作の自動化を実現した。
 1 μlのs-IgA試料を用いて酵素標識抗体と反応後、抗原固定化ビーズで未反応の抗体を分離することにより、ストレス状態における唾液中濃度まで定量を可能とした。
 将来的には、可搬型CDドライブとの組み合わせにより、日常の健康管理への応用が期待できる。