◆医療・生命◆ メタボリックシンドロームの早期発見

最近注目されているメタボリックシンドローム、いわゆる生活習慣病の原因として生体のインスリンに対する感受性や高インスリン血症が関与していると考えられている。これらの病態の評価のためには、血糖だけでなく血漿中のインスリン濃度を測定する必要がある。本研究では、キサンチン系色素と金属がインスリンと三元錯体と呼ばれる複合体を形成することを利用すればインスリンを高感度に測定することが可能であることがわかった。簡便で正確なインスリン測定法によりメタボリックシンドロームのマーカーとして早期発見への応用が期待される。

P2038】      三元錯体生成反応を用いるインスリンの吸光光度定量法について

(大阪薬大) ○内藤雅人、神野伸一郎、中島寛人、山口敬子、藤田芳一
[連絡者:藤田芳一、電話:072-690-1063]

 近年、メタボリックシンドロームが非常に注目されているが、このメタボリックシンドロームとは、危険因子の合併により動脈硬化が高度に引き起こされやすくなった状態で、危険因子としての肥満症、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病が、本病態と密接に関わっている。これら生活習慣病集積の背景には、インスリン抵抗性や高インスリン血症が関与すると考えられている。インスリン抵抗性とは<インスリンの効きが良いのか悪いのか>の指標であり、インスリン抵抗性が高いとはインスリンの感受性が悪く、インスリンの効きが悪いということであり、これにより、糖尿病の発症や病態の進展が引き起こされる。しかしながら、インスリン抵抗性の評価方法は甚だ困難で、少なくとも血糖だけでなく血漿インスリン値を測定することが必要である。これらのことから、簡便で正確なインスリン測定法の開発は、糖尿病の早期発見、さらにはメタボリックシンドロームマーカーとしても極めて有益である。 
 
本研究では、キサンテン系色素と金属イオンとインスリンとの三成分よりなる三元錯体生成反応に着目した。一般に吸光度は吸収断面積に比例するので、高感度分析法を設定するためには、呈色化学種の吸収断面積を可能な限り大きく、すなわち、かさの高い三元錯体を生成させ、界面活性剤により形成されるミセルに取り込ませれば、極めて有効にインスリンを測定することが可能になると考えられる。