◆生活文化・     マグロ種を高精度で見分ける簡易判別法を開発
 エネルギー◆ 

 食品の安全管理のために、食品の名称や原産地等の正確な表示が義務づけられるようになったが、マグロやコメなどは、外観からその場での種の判別が困難な食品である。今回、マグロの遺伝子多型を蛍光分光学的に識別する Fluorogenic Ribonuclease Protection (FRAR) 法が開発された。この方法を用いて、太平洋産クロマグロ、大西洋産クロマグロ、ミナミマグロなどの種を精度良く判別できることが示された。特殊な分析機器を必要としない、現場における食品種の簡易判別法として期待できる新技術である。

P1047】        食品流通検査へ向けた簡易遺伝子診断技術の開発
                ーマグロ種簡易判別法の開発ー

     (JST・九大院農1・九大院工2)◯北岡桃子・岡村暢子・中野菜穂子・一瀬博文1
      丸山達生2・神谷典穂2・後藤雅宏2
       [連絡者:北岡桃子,電話:092-851-8238]

 近時、食の安全や健康に対する消費者意識の高まりからJAS法が改訂され、食品の名称および原産地等の正確な表示を義務づける「食品品質表示基準」が制定された。しかしながら、外観から種の判別が困難な食品(例えばマグロやコメなど)は、流通過程での取り違えや不正表示が問題となることから、流通現場での品種判別を可能とする迅速・正確な分析技術の開発が望まれている。本発表では、マグロ種の迅速判別を例とし、一塩基遺伝子多型(Single Nucleotide Polymorphism; SNP)解析を基盤とした迅速品種判定技術について紹介したい。  
 我々は、遺伝子多型を蛍光分光学的に識別するFluorogenic Ribonuclease Protection(FRAP)法の開発に取り組んできた。FRAP法は、DNA/RNAからなる標的遺伝子サンプルを酵素的に消化し、蛍光量変化から遺伝子型を容易に識別する点で特徴的な分析法である(図-1)。また、FRAP法が特殊な分析機器を必要としない点でも現場型遺伝子診断技術と言えよう。
 6種のマグロから遺伝子サンプルを調製し、太平洋産クロマグロ識別用プローブを用いてFRAP解析を行った。この結果、太平洋産クロマグロからのみ強い蛍光が観察され、太平洋クロマグロを精度良く判別しうることが示された。また、また大西洋産クロマグロ・ミナミマグロなどの種においても、FRAP法を通じた魚種判別が可能であった。現在、コメ品種判別などへの研究を展開してFRAP法の応用性を検討している。
 FRAP法は煩雑な分析操作・高額な分析機器を必要としないことから、現場での遺伝子診断(品種同定)を促進すると期待している