◆生活文化・  温泉水をめぐる様々な問題にいどむ簡便な新分析法
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 近年,温泉に関しては,衛生面,温泉資源面,さらには源泉の使用に関する不当表示などの問題が取りざたされている。これらの問題の解決には,温泉水を簡便かつ迅速な分析によりモニターしていく必要がある。本研究では,温泉水成分の分析にキャピラリー電気泳動法を適用する方法を検討した。その結果,アルカリ単純泉水中の多種類の陽イオン,陰イオンを迅速かつ正確に同時定量しうることを見いだした。今後は他の種類の温泉水への適用を検討し,さらには現地分析できるような小型装置の開発へとつなげていく予定である。

C1018】       キャピラリー電気泳動法による温泉水中の主要成分の分析

(甲南大理工)○朝井知子・茶山健二
[連絡者:茶山健二, 電話:078-435-2500]

 近年、温泉人気が高まる一方、レジオネラ症や循環濾過などの衛生問題、温泉資源の制約、枯渇問題など様々な問題が生じている。また、加水、加温、循環濾過などを行ったり、入浴剤を混入したりしているにも関わらず、源泉をそのまま利用しているかのような、事実と異なる表示を行い、消費者に誤解を招くという問題も発生している。そのため今後、源泉の成分表示だけでなく各温泉の浴槽中の成分を定期的に測定し表示することが望まれる。温泉水中の成分は現在、環境省自然環境局発行の「鉱泉分析法指針」に基づき、炎光法や原子吸光法、滴定法、イオン電極法、イオンクロマトグラフ法など様々な方法で分析されている。これらの方法では正確なデータは得られるが測定に多大な時間を要するものが多い。そこで本研究では、短時間、省試料、低コストで高分離能であるキャピラリー電気泳動法を用いた、温泉水中の主要成分の簡便かつ迅速な分析法を検討した。キャピラリー電気泳動とは、毛髪の太さ程度の細管中にサンプルを入れ、電圧をかけることにより、電荷の違いなどで成分を分離するものである。
 温泉水中に含まれる成分には様々あるが、今回は、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、リチウム、バリウム、フッ化物、塩化物、臭化物、硝酸、硫酸及びリン酸を分析対象として実験を行った。標準溶液を使用し、測定のための最適条件を決定した。この最適条件を用いて、各成分の定量を行うため、検量線を作成した。これらの結果をもとに実試料 (A温泉:アルカリ単純泉) の測定を行い、温泉成分表と比較したところ、それぞれの成分について成分表と同等な値を得ることができた。
 今後、比較的測定が難しいとされる温泉についても、測定できるか検討を行い、将来的には装置を小型化し、実験室ではなく採水したその場で測定できるような方法に発展させることができればと考えている。