◆新素材・   鉄鋼スラグ中のマグネシウムの化学構造を固体NMR法で初めて解明
 先端技術◆

 スラグ・天然鉱物からガラス,セラミックスに至る物質中にあるマグネシウムは重要な元素であるにも関わらず,どのような化学構造で存在するかを見極めるのは難しかった。従来の固体NMR法では,マグネシウムの化学構造を特性上分析できなかった。今回,高磁場固体NMRに,開発した強ラジオ波用検出器を導入し,かつ独自に開発してきたMQMAS法を適用して,スラグ中に水酸化マグネシウムと酸化マグネシウム以外に複雑なマグネシウム化学構造もあることを初めて見出した。このような複雑な化学構造が存在することを上手く利用すれば,新材料の開発への活用が期待される。

D3018】       固体NMR法による無機化合物中の25Mgの分析

(新日鐵先端研・ 日鉄テクノリサーチ1) ○齋藤公児・金橋康二・畠山盛明1  
[連絡者:齋藤公児、電話:0439-80-2270]

 Mgは生体系ばかりでなく、スラグ・天然鉱物やガラス・セラミックス等の物質科学の分野において、非常に重要な元素である。特に鉄鋼の副産物(鉄1トンで300kg)であるスラグの有効利用は卑近な課題であるが、その化学構造が全く不明なためスラグの利用範囲は限定されている。固体NMRはX線と異なりアモルファス材料でも、その化学構造を直接知ることができるので、スラグのMgの化学構造解析にも有効と期待されていた。しかし、固体25Mg NMR の測定は、 (1)四極子核であること、(2)低感度・低共鳴周波数であることが原因で、その分析は従来ほとんど不可能であった。
 そこで本研究では、高磁場固体NMR(16.4 T)を用い且つ強ラジオ波を入れることのできる検出器を開発し、更に我々が様々な実用材料系に適用してきたMQMAS法を利用して、スラグへの固体25Mg NMRの展開を図ることを目的とした。25Mg核での測定条件を確立しスラグへのMQMAS法の適用を行った結果、スラグにはMg(OH)2とMgOだけでなく、複雑なMgの化学構造が存在することを初めて見出した。Mgは有機・無機を問わず重要な元素であるので、本手法の応用が今後増えるでろう。同時に本研究から、従来不明であった鉄鋼スラグのMgの化学構造が明らかとなり、その情報を利用して新たな利材化を狙ったプロセス制御等への展開が期待できる。

図 スラグの固体25MgNMR 分析実現から利材化への展開