◆新素材・     氷を使って環境にやさしい分離法を目指して
 先端技術◆ 

 クロマトグラフィーは非常に基本的な分離手法であり,化学物質の精製・分離に不可欠な存在である。ところが用いる移動相や固定相は環境に負荷のかかる物資も少なくない。著者らの提案したアイスクロマトグラフィーは氷を固定相として環境にやさしい分離法を目指している。その第一段階として,移動相をヘキサン−テトラヒドロフランとしたところ,氷表面との水素結合により極性基を多く持つ化合物ほど保持されやすい事を明らかにした。更に本法を発展させると,タンパク質等生体物質を,氷と水溶液だけで分離できることが期待される。

G2002】            アイスクロマトグラフィー

(東工大院理)○岡崎友衣子・岡田哲男
[連絡先:岡田哲男, 電話:03-5734-2612]

 クロマトグラフィーは代表的な分離・分析手法であり、幅広い分野の研究に用いられている。適切な条件を決定することで多くの化合物を分離することが可能であるが、移動相として有機溶媒を用いることも少なくない。また、固定相として合成高分子や無機物が用いられており、この製造過程での環境負担の軽減も必要である。このような観点から、有機溶媒の使用を抑制して溶媒に水のみを使用する分離法の確立を目指し、アイスクロマトグラフィーを提案する。
 究極の環境調和分離であるアイスクロマトグラフィーの第一段階として、固定相に氷粒子を、移動相にヘキサン−THFを用いてフェノール類やポリエーテルを分離した。大きさが10-6〜10-8 mの氷固定相調整技術を確立し、氷表面での相互作用を評価することができた。ヘキサン−THF移動相では、極性基を多く持つ化合物ほどよく保持され、氷表面と試料との水素結合が保持を決定する重要な要因の一つであることが示唆された。右に水素結合によって氷粒子に保持され、分離される機構の模式図を示す。
 このような原理で実験系をさらに展開し、溶媒として水溶液を用いて、生理活性を保ったままタンパク質やDNAを分離することが可能な水のみの分離系が開発できるものと考えている。