◆環境・防災◆  空気中の汚染物質を集める魔法の注射針
 シックハウス症候群などへの対応に向けて室内空気環境の評価が注目されている。しかし,空気中の揮発性有機化合物(VOC)の測定には,ガスクロマトグラフ分析装置に導入する前に煩雑な濃縮操作が必要であった。本研究では,短時間に容易に気体中のVOCを濃縮することのできる新しい気体濃縮用デバイスを開発した。高分子系吸着剤を充填した注射針型デバイスを,市販のガス検知管用採取器に接続して試料を吸引し,そのまま装置に挿入して VOCを測定する。濃縮した試料を常温で一週間程度保管することも可能で,本デバイスにより簡単で正確なVOC測定が可能となった。

F1002】      注射針型新規気体試料濃縮用デバイスの開発

(豊橋技科大工・信和化工)○植田郁生・齊戸美弘・小寺健三・神野清勝
[連絡者:神野清勝、 電話:0532-44-6805]

 近年、特に注目されてきている室内空気環境評価において、空気中の揮発性有機化合物(VOC)を短時間で正確に測定することは、極めて重要である。気体中のVOCの測定には、一般的にガスクロマトグラフィー(GC)が用いられている。しかし、空気中に存在するVOCの正確な定量結果を得るためには、気体試料を濃縮する必要がある。従来の気体試料の濃縮方法には、活性炭やシリカゲルを用いた方法があるが、これらの方法で濃縮した試料を脱着する際に有機溶媒を必要とするほか、多段階操作が求められる。
 そこで、我々は短時間で容易に気体中のVOCを濃縮することができる注射針型新規気体試料濃縮用デバイスを開発した。この新規針型デバイスは、メタクリル酸系コポリマーの粒子を吸着剤として充填した横穴針で、市販のガス検知管用採取器に接続して試料ガスを吸引するだけで簡単に試料濃縮を行うことができる。濃縮した試料を分析する際には、この針型デバイスをガスタイトシリンジに接続し、GCの注入口に挿入して、熱脱着した試料をシリンジ内の窒素を用いて注入する。
 本研究では、まず注入口の温度、脱着の時間、試料を押し出す窒素量などの最適化を行った。その結果、開発した新規針型デバイスは一般的なVOCに対して優れた試料濃縮性能を示し、再現性も良好であった。また、濃縮した試料を常温で約一週間程度保存できることが明らかとなった。