◆医療・生命◆ 皮膚ガスで健康管理 初めて一酸化炭素の放出を確認
 安全で被験者への負担が少ない手法として,皮膚表面から放出されるガスをモニタリングし,体内の異常を知る目安にする方法を開発した。皮膚からはアンモニア,メタン,水素,アセトンなど様々なガスが放出されるが,今回さらに一酸化炭素が放出されていることを初めて確認した。また呼気と皮膚ガスとはある程度の対応関係があることもわかった。一酸化炭素は,糖尿病などの酸化ストレスのマーカーとしても注目されることから,このような皮膚ガス中に存在する成分をモニターすることは,健康管理のために体内状態を知る方法として期待される。

E1001】      ヒト皮膚表面より放出されるガス(VI);一酸化炭素の発見

(名工大院工1・タイヨウ2・ピコデバイス3・名大総合保健体育科学セ4
○野瀬和利1・植田秀雄2・津田孝雄3・大桑哲男1・大谷 肇1・近藤孝晴4
[連絡者:津田孝雄, 電話:052-735-7327]

 ヒトの健康管理を行なうために、体内の状態を連続的にモニタリングすることが近年望まれている。これに伴い、安全で被験者への負担が少ない(非侵襲的)手法に関する研究が進められてきている。そのような手法のひとつとして、我々は、ヒト皮膚表面からガスが放出していることを見出し、皮膚ガスと名づけて様々な研究を行なってきた。これまでに、水素、アセトン、メタン、エタン、エチレン、アンモニアなどが皮膚ガス中に存在することを明らかにした(図I)。
 一方、一酸化炭素は、一般に、ガス中毒や喫煙状況の指標として用いられる。しかし、極微量の一酸化炭素は抗炎症作用を持つなど、体に有益な効果をもたらすことが確認されてきている。また、糖尿病などにより引き起こされる酸化ストレスの指標としても注目されている(図II)。呼気とともに一酸化炭素が放出されることは既に明らかになっており、ガス中毒の指標などに用いられている。しかし、皮膚から一酸化炭素が放出されていることを明確にしたのは本研究が初めてである。さらに、一酸化炭素濃度は、呼気と皮膚ガスとの間にある程度の対応関係があることもわかった。
 一酸化炭素に限らず、皮膚ガス中に存在する成分は体内の状態を知る手がかりを与える。皮膚ガスは容易に採取できるため自己健康管理に適用したり、あるいは連続的にモニタリングすることにより体内の異常を知る目安にする、など様々な可能性を秘めている。