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各 地 の 名 水 く ら べ

 日本ではかつて全国どこでも一般的に水は豊富でおいしく,安全であった。最近「おいしい水」「名水」のブームである。これは日本各地の湧水が枯渇し,汚染され,「おいしい水」が少なく貴重になってきたことを意味している。本研究ではこの貴重になってきた「おいしい水」の評価方法を独自に開発した。名水を,舌や鼻を使う曖昧な官能検査や特殊な測定機器を使わず,全国各地の検査機関で可能な化学的酸素要求量COD値,イオンクロマトグラフ法による硬度,pHの測定により評価するものである。これにより全国の「名水」,世界のミネラルウォータの評価を行った。

【I1012】             各地名水の水質解析評価

(徳島文理大工)○吉田知司・谷川浩司・近藤慎也・耳塚一正・池田早苗
[連絡者:吉田知司,電話:087-894-5111]

 世界各地に名水(おいしい水)といわれる水が数多く存在している.その中には古くから健康の維持・病気の治癒や信仰の対象として有名な水もある.一方,地球環境の汚染により安全でおいしく安心して飲める天然水が少なくなり,おいしい水についての関心が高まっている.水環境の保全と水資源の確保のために,地域に根ざした生活用水の実態を明らかにするのも意義あることと考え,各地の名水と称する真水(地下水・湧水)を集めて水質解析を行った.市販のミネラルウォータや水道水の水質分析も実施して,化学成分の比較を試みた.ミネラルウォータについては外国産と国内産の違いも示す.
 本研究では,イオンクロマトグラフ法で溶存イオン濃度を測定し,化学的酸素要求量(COD)やpHも調べた.これらのデータから当研究室で開発した水質評価法により名水の水質を評価した.評価にはCOD(値が小さい程きれいな水),硬度(カルシウムとマグネシウム濃度から計算.値が小さい程軟水) ,pHを使う.  

 測定した名水のCODは0.1〜0.7 ppmで平均値は0.2 ppmであった.硬度は3.2〜114.3  ppmで平均値70.5 ppmの軟水であった.特にきれいな名水は,徳島県の桐の水と香川県の大師の水で平均的にCODが0.1 ppm前後であった.名水の中でも沖縄県の水は,COD0.2〜0.6 ppmであったが,硬度はカルシウム濃度が高く133.2〜373.2 ppmとなり平均値は286.5 ppmの硬水であった.測定した国内産ミネラルウォータのCODは0.1〜0.3 ppmで平均値は0.2 ppmであった.硬度は12.4〜153.5 ppmで平均値は48.5 ppmであった.外国産ミネラルウォータのCODは国内産並みで,硬度は24.5〜616.7ppmと広範囲にわたり平均値は263.7 ppmであり大部分が硬水であった.例外的に硬度が1361.4 ppmにもなる水があった.ミネラルウォータの「きれいさ」は変わらないが,硬度は一般的に外国産が高かった.測定した水のほとんどが中性から微アルカリ性であった.水道水にも市販ミネラルウォータに匹敵するきれいな水があった.