◆環境・防災◆  人体に悪影響を及ぼす大気エアロゾルの成分と黄砂の関係
 近年,大気中の微細な浮遊粒子状物質(大気エアロゾル)が人間の呼吸器や循環器に悪影響を及ぼすことが指摘されている。人体への影響はエアロゾルの性質に依存するため,それらの化学成分を調べることは重要である。ここでは,大気中エアロゾルを粒径2.1〜11μmの粗大粒子と2.1μm未満の微小粒子に大別し,それらの化学成分に及ぼす黄砂の影響について解析した。京都市における調査の結果,Na, Mg, Al, Si, Cl, Ca及びFeは粗大粒子に,Sは微小粒子に主として存在するが,それらの分布は黄砂の発生場所と風送経路により変化することが明らかとなった。

【P2071】    大気エアロゾル中化学成分の粒径別挙動における黄砂の影響の解析


(京都工繊大・工芸1、環境科学セ2) ○山口大輔1、布施泰朗2、山田 悦1,2
[連絡者:山田 悦、電話:075-724-7981]

 大気エアロゾルは大気中の微細な浮遊粒子状物質(SPM)であり、近年、呼吸器や循環器系など人体に悪影響を及ぼすことが明らかとなり、また地球環境や気象への影響も懸念されている。しかし、雨など湿性沈着に比べ、エアロゾルやガスなど乾性沈着における研究例は少ない。 
 本研究では、大気エアロゾルの粒径別捕集法としてアンダーセンローボリウムサンプラーを、エアロゾルおよびガス別の捕集法として4段ろ紙法を用い、それぞれの化学成分濃度を蛍光X線分析法およびイオンクロマトグラフ法で求め、その挙動と発生源について検討した。大気エアロゾル中化学成分の粒径別分布に及ぼす黄砂の影響についても解析した。
 京都市でのSPM質量は6.7〜80.2μg/m3で、40〜85%は微小粒子(<2.1μm)であった。Na、Mg、Al、Si、Cl、CaおよびFeは粗
側(2.1〜11μm)に、一方Sは微小側に存在した。Al、Si、Ca、MgおよびFe濃度は、2002年の春季には微小側が、2002年11月と2004年春季には粗大側が高くなった(Fig. 1)。これらは大規模な黄砂が観測された時期と一致し、これらの元素の粒子状分布の違いは、化学輸送モデル(CFORS)の結果からも、中国での黄砂の発生場所と日本までの風送経路の違いによるものと考えられる。一例として2002年4月10日の黄砂の輸送をFig. 2に示す。