◆新素材・
 先端技術◆ 
プラスチック中の有害金属を定量するための迅速・廉価な分解法の開発

 環境省は一般廃プラスチックは埋立から焼却処理に方針替えした。一方EUは電気電子機器について有害金属の使用制限指令を出した。焼却灰を抱え込む自治体や電気電子機器輸出メーカーは大慌てで対応に奔走している。プラスチックには有害金属を含んでいるものもある。一般にプラスチック中の金属の含有量を知るには試料の分解に大変な手間と時間が必要である。本研究では家庭用電子レンジを用いて,たった4分で分解する方法を確立した。混酸を加えレンジで分解し,ホットプレートで酸を追い出せば分解完了である。最も嫌われる鉛,カドミウム,クロムなどが精度良く定量できた。

【D3008】    ポリエチレン及び塩化ビニル中の有害金属定量のための迅速分解法

(千葉大工)○櫻井 裕樹、藤浪 眞紀、小熊 幸一
[ 連絡者:小熊 幸一, 電話 043-290-3502 ]

 EUでは2006年7月1日以降市場に上がる電気・電子機器に対し、有害物質(水銀、カドミウム、鉛、六価クロム等)の使用を制限し、生産から処分にいたる全ての段階で、環境や人の健康に及ぼす危険性を最小限にする方向に動いています。
 電機・電子部品には多くのプラスチックが材料として用いられており、そのプラスチック中に含まれるカドミウムや鉛の量を測定するには、試料を完全に分解し、溶液化した方が定量法の選択肢が広がると同時に、より正確な測定が可能となる。しかし、プラスチックは一般に酸や薬品に強い耐性を持ち、さらに製品化に伴い、様々な添加物が混入するため分解は難しく、現在、迅速かつ簡便な分解法の開発が望まれている。本研究では、1万円台の家庭用電子レンジを用いて塩化ビニルおよびポリエチレン試料を約4分で分解することに成功した。
試料をPTFE製分解容器にはかりとり、硝酸−硫酸を加えたのち家庭用電子レンジを用いて分解した。次いでホットプレート上で硝酸、二酸化窒素を揮散させ、硫酸溶液とした後、水で定容した。その試料溶液をICP-AESによる測定に供し、カドミウム、クロム、鉛を定量した。

 本法をポリエチレン標準物質BCR-861中のカドミウム(21.7 ppm)、クロム(17.7 ppm)の定量に適用したところ認証値とよく一致する分析値が得られ、相対標準偏差は3%以下であった。ポリ塩化ビニル試料中カドミウム(100 ppm)、クロム(150 ppm)、鉛(100 〜 200 ppm)の分析では、相対標準偏差は3%以下であった。さらに、硫酸を分解に用いても鉛を正確に定量できることを明らかにした。これは従来の定説を覆すものである。市販のポリエチレンもしくは塩化ビニル製品にも適用することができ、1試料あたりの分解時間が4分程度、測定時間を含めても40分と短い。1試料の分析に要する費用は約100円で極めて低コストである。