◆環境・防災◆  室内空気汚染物質ホルムアルデヒドの簡易測定法の開発
 ミニチュア拡散スクラバー(大気汚染がス捕集装置)とLED比色計を組み合わせて,大気中ホルムアルデヒドの簡易測定方法を開発した。毎分100 mLの吸引流量で30分間大気捕集を行い,1 mL程度の吸収液にホルムアルデヒドを捕集した。公定法に基づき発色試薬を加えて試験したところ,検出限界は数ppbvであり,室内環境中のホルムアルデヒドを測定するに十分な感度,精度を持つことが示された。本法は使用する吸収液と発色試薬を変えることでNO2,SO2,NH3等の多種類の大気汚染ガスの測定に応用でき,現場での簡便な測定法として大いに期待される。

【I3010】       ミニチュア拡散スクラバーとLED比色計とを組み合わせた
            室内空気汚染ガスの簡易測定法の開発

(慶鷹義塾大学理工学部)○田中茂、日比聡、篠田祥尚、司馬里佳
連絡者:田中茂,電話:045・566−1572

 ホルムアルデヒドはシックビルデイング症候群に代表される室内空気汚染物質である。ホルムアルデヒドはWHOにより発ガン可能性物質に指定されており、わが国でも厚生省により室内環境中の30分間の平均値でホルムアルデヒド濃度は80ppbv以下という指針値が示されている。そこで、現場での測定が可能な室内環境中のホルムアルデヒド濃度の簡便な測定方法が必要となってきた。現在、ホルムアルデヒドの測定に用いられているDNPH(2,4-dinitro-phenylhydrazine)/HPLC又はDNPH/GC法は、分析室に設置された高価なHPLC又はGCなどの分析装置が必要であり、現場でのホルムアルデヒド濃度を簡便に測定するには適していない。そこで、当研究室で開発してきた大気汚染ガス捕集装置である拡散スクラバーをコンパクトにした“ミニチュア拡散スクラバー”を開発した。写真に示す“ミニチュア拡散スクラバー”を用いることにより、1ml程度のわずかな吸収液にガスを捕集することができる。従って、分析感度が低く使用されなかった簡便な比色分析法を使用でき、写真1に示す安価で小型なLED-PM(発光ダイオード比色計)と組み合わせた汚染ガスの簡易測定を開発した。
 “ミニチュア拡散スクラバー”は、内管に多孔質テフロン(PPTFE)チューブ(4×5mm¢)を用い、外管にガラス管(7×9mm¢)を使用したシンプルな二重管であり、ガス成分のみを効率的に捕集することができる。全長は約10cmと非常にコンパクトなペンサイズのガス捕集装置である。

 大気吸引流量100mL/minの場合、捕集効率は95.2%であり、ホルムアルデヒドをほぼ100%捕集することができた。100mL/minにて30分間捕集を行った後、公定法に基づき、AHMT(4-amino-3−hydrazino-5-mercapto-1,2,4-triazole)6mgを加えよく振って20分間反応させ、過ヨウ素酸カリウム4mgを加え発色を行う。
 本法の検出限界値は、数ppbv(大気採集量3L)であり、室内環境中ホルムアルデヒドを測定するに充分な感度、精度を持つことが判った。又、本法は、使用する吸収液と発色試薬を変えることで、NO2,SO2,NH3等の多種類の大気汚染ガスの測定に応用でき、現場での簡便な測定が可能である。
(本研究は、科学技術振興事業団・独創モデル化プログラムにより、ガステック?から製品化が行われた。)