◆新素材・
 先端技術◆ 
輪に取り込んでマイクロスケ−ルの微粒子のサイズを知る

 細胞やDNAのような生体微粒子の分離とサイズ測定を同時に行うことを目指して,本研究では,凸レンズと平板ガラスを重ねることで生じる,空隙間隔が連続的に異なる微少空間を利用した新しい分離分析手法を開発した。粒子は水の蒸発の際にレンズの中心部に引き寄せられてそのサイズに対応した位置にトラップされる。中心からの位置と空隙間隔の関係は光の干渉によるニュートンリングから決定できるため,分離と同時にトラップされる粒子の直径も測定される仕組みである。本法は装置が小型で,微少量の生体微粒子試料を数分で分析できるので今後多方面への応用が期待される。

【H1006】 ニュートンリングマイクロセルによる生体微粒子のサイズ分離分析法の開発

(阪大院理)○ 八田 政宏 文珠 四郎 秀昭 渡會
[連絡者:渡會 仁、電話:06-6850-5411]

 現在、細胞やDNAのようなmmからnmレベルの生体微粒子の、簡易で迅速な新しい分離分析手法が必要とされている。しかし、微量の微粒子試料について、分離とサイズ測定を直接的かつ同時に行うことのできる方法はこれまでにはなかった。
 本研究では、平凸レンズと平板ガラスを用いて空隙をつくり、その空隙をナノメータレベルで制御することによって、微粒子の分離とサイズ測定が同時に可能なニュートンリングマイクロクロマトグラフ法を開発した(図1)。微粒子は、溶媒である水が蒸発する際の水表面の移動によってレンズの中心部へ引き寄せられる。その結果、微粒子はそれぞれの大きさに対応した空隙位置にトラップされる。レンズの中心からの位置と隙間距離の関係は、レンズとガラス平板間の光の干渉により生じるニュートンリングからあらかじめ決定でき、したがってトラップされる微粒子の直径が測定できる(図2)。二種類の粒径の異なる蛍光性ポリスチレンラテックスを用いて微粒子のサイズ測定を行ったところ、半径の異なる同心円状に微粒子がトラップされた。同心円の半径から空隙を求め、空隙距離に対して円形状にトラップされた微粒子の蛍光強度をプロットするとクロマトグラムが得られ(図3)、そのピークは試料の粒径に一致した。
 この装置によれば、微少量の生体微粒子試料が数分で分析できる。さらに、装置が小さいので、さまざまな顕微分光装置と組み合わせることができ、微粒子の種類や状態までも特定することが可能である。この方法を用いれば、たった一つの細胞を分析して染色体の異常を見つけ出すことも 夢ではない。

図1. ニュートンリングマイクロセルによるサイズ分離の原理。大きいものはより外側でトラップされるが、小さなものは内側へ入り込むことができる。

図2. ニュートンリングと、レンズ-ガラス平板間に円状にトラップされた酵母細胞の様子。

図3. ニュートンリングマイクロクロマトグラムの測定例。