◆医療・生命◆ 迅速・簡便な抗原ー抗体反応測定法の開発

 従来のイムノアッセイ法は操作が煩雑で測定に長時間を要し,しかも抗原抗体反応が固液界面という不均一系で進行するため,反応効率が低いという問題があった。今回,抗体とポリマーのコンジュゲート(複合体)を合成し,これと蛍光プローブを併用した新規イムノアッセイ法を開発した。検出対象である抗原を添加すると,抗原の濃度に伴い抗体―ポリマーコンジュゲートと抗原からなるネットワークの形成が促進され,結果として溶液の粘性が増大することにより蛍光強度が増加した。本手法は,溶液という均一系でワンポットの操作で検出できるため,種々の抗原の迅速分析が可能になる。

【P3093】  抗体−ポリマーコンジュゲートと場感受性蛍光プローブを併用した
       迅速・簡便な新規イムノアッセイ

(九大院工)○宗 伸明・石田祐也・久米正志・今任稔彦
〔連絡者:宗 伸明, 電話:092-642-4134〕

 抗原抗体間の厳密な分子認識を利用するイムノアッセイ法は、検出対象とした物質を高選択的に分析するための有用な手法として、様々な分野で広く利用されている。しかし、酵素免疫測定法に代表される現行の手法は、操作が煩雑であるため測定に長時間を要し、しかも抗原抗体反応が固液界面という不均一系で進行するため、反応効率が低いという難点を有している。イムノアッセイの手法が必要とされている現場においては、多数の検体を効率良く処理することが求められる場合が多く、それ故、迅速・簡便な新しいイムノアッセイ法の開発は取り組むべき重要な課題と言える。
 そこで、本研究では、抗体とポリマーのコンジュゲート(複合体、接合体の意)を合成し、この抗体−ポリマーコンジュゲートと場感受性蛍光プローブを併用した新規イムノアッセイ法の開発について検討した。まず、合成化学的手法により、アクリルアミド主鎖に対して櫛型にポリクローナル抗体(抗ヒトIgG抗体)を導入した構造を有する抗体−ポリマーコンジュゲートを作製した。次に、この抗体−ポリマーコンジュゲートと、粘度変化に応答する場感受性蛍光プローブであるCCVJの共存下において、検出対象である抗原(ヒトIgG)を添加し、抗原の検出を試みた。その結果、溶液中のCCVJの蛍光強度は、抗原濃度の上昇に伴って増大することが確認された。このことは、添加した抗原量に対応して抗体−ポリマーコンジュゲートと抗原から成るネットワークの形成が促進し、結果として溶液の粘性が増大したことを示唆している。本手法は、溶液中という均一系においてワンポットの操作で検出が行えるため、迅速・簡便な新しいイムノアッセイ法と成り得ることが期待でき、今後、更に詳細な性能検討を行いたいと考えている。