◆医療・生命◆ ホモシステイン関連物質の測定で動脈硬化を予防する
 ホモシステインは動脈硬化のリスクファクターと言われているが,この原因としてホモシステインから生成するホモシステインチオラクトンがリポタンパク質LDLと反応して動脈硬化の原因物質である変性LDLを生成することが挙げられる。健康な人ではホモシステインチオラクトンの分解酵素が働くため変性LDLの量が抑えられているが,近年遺伝的にこの分解酵素の働きの弱い人がいることがわかってきた。本研究では,変性LDLであるホモシスタミドの測定により,遺伝子多型に関連した分解酵素の活性の差異が検出された。動脈硬化予防への貢献が期待される。

【P2092】  動脈硬化のリスクファクターであるホモシステインと関連物質の分析

(明治薬大) ○兎川忠靖・向日良夫・鈴木俊宏・田辺信三 
[連絡者:兎川忠靖, 電話:0424-95-8931]

 ホモシステインは健康な人の血中にも存在しているアミノ酸の一つである。「血中ホモシステイン濃度の上昇は動脈硬化を引き起こす」と言われて以来、実際の症例が多数報告され、ホモシステインは動脈硬化の独立した危険因子であると認識されるようになった。ホモシステインによる血管障害の機構について多くの仮説があるが、その一つにホモシステインから変化したホモシステインチオラクトンがリポタンパク質であるLDLと反応することで、動脈硬化の主原因であるといわれている変性LDL(ホモシスタミド)という物質を作ってしまう、という説がある。ホモシステインチオラクトンはホモシステインから細胞内で生成するが、そのレベルを測定する比較的簡単な分析法がこれまでなかった。我々はその高感度測定法を確立し、ヒトの血管内皮細胞を培養したとき、ホモシステインチオラクトンが増えることを報告した。このホモシステインチオラクトンがLDLと反応しホモシスタミドを形成すると思われる。特に、ビタミンB6、B12、葉酸が不足すると血中ホモシステイン量が増え、ホモシステインチオラクトンを経てホモシスタミドの増加につながる。一方、健康な人がホモシステインチオラクトンによる障害を受けない理由として、血中にホモシステインチオラクトンの加水分解酵素が存在し、そのためホモシスタミドの量が抑えられている。しかし、この酵素には生まれつき個人差があり(遺伝子多型)、加水分解能力の弱い人がいることがわかってきている。

本研究では、動脈硬化予防の観点から、ホモシスタミドの分析法を確立し、ホモシステインチオラクトン加水分解酵素の活性との関係を検討し、酵素の遺伝子多型に関連した活性の差違を認めた。