◆医療・生命◆ パーキンソン病の高感度診断法の開発
 パーキンソン病は大脳基底核の線条体におけるドパミン性神経の退化及び中脳の黒質におけるドパミンの欠乏に起因する疾患である。近年,パーキンソン病患者では健常人と比較して,脳内のテトラヒドロイソキノリン類(TIQs)である1-MeTIQは低値を,1-BnTIQは高値を示し,TIQは変動しないとされている。そこで,今回蛍光誘導体化試薬であるDMS-Clを用いて,TIQsを特異的に蛍光ラベル化して,高感度に分析する方法を開発した。本法は,脳内の1-MeTIQ,1-BnTIQ及びTIQを同時に高感度分析できるため,パーキンソン病の診断への応用が期待できる。

【P2080】  脳内テトラヒドロイソキノリンの高感度蛍光プレラベルHPLC分析

(福山大・薬)○井上裕文、松原大祐、宗村小夜香、鶴田泰人
[連絡者:鶴田泰人,084-936-2111]

 パーキンソン病は、大脳基底核の線条体におけるドパミン性神経の退化及び中脳の黒質におけるドパミンの欠乏を原因とする錐体外路疾患である。近年、合成神経毒である1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロイソキノリン(MPTP)によりチロシンヒドロキシゲナーゼ活性が阻害されてパーキンソン病症状が引き起こされることが報告されて以来、テトラヒドロイソキノリン類(TIQs)がパーキンソン病に関連していると考えられてきている。脳内に存在する生体内TIQsとしては、1,2,3,4 -テトラヒドロイソキノリン(TIQ)、1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(1-MeTIQ)及び1-ベンジル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(1-BnTIQ)が報告されており、パーキンソン病患者では健常人に比べて1-MeTIQは低い値を、1-BnTIQは高い値を示し、TIQは変動しないといわれている。また、ラットを用いる研究で、TIQ及び1-BnTIQを投与するとパーキンソン病様症状を誘発するが、1-MeTIQの前投与によりTIQ及び1-BnTIQのパーキンソン病誘発作用が阻害されるとも報告されている。したがって、脳内のTIQ、1-MeTIQ及び1-BnTIQを同時に定量することはパーキンソン病とこれらTIQsの関連を明らかにするうえで重要である。

そこで、本研究では、当研究室で開発した蛍光誘導体化試薬である4-(5,6-dimethoxy- 2-phthalimidinyl)-2-methoxyphenylsulfonyl chloride (DMS-Cl)を用いて二級アミノ基を有する化合物を特異的に蛍光ラベル化する比較的簡単な前処理法で、脳内のTIQ、1-MeTIQ及び1-BnTIQを高感度にHPLCで分離分析する定量法について検討した。今後、今回確立した分析法を用いて脳内のTIQ、1-MeTIQ及び1-BnTIQを同時分析することにより、それらの濃度とパーキンソン病と関連性についての有用な知見が得られるものと考えられる。