◆ 生活文化・  化学発光を利用して新たに玄米の鮮度評価を
 エネルギー◆
 簡便,迅速,高感度に玄米の鮮度が分かる新しい分析法が開発された。米自身に存在する酵素の一つであるペルオキシダーゼ(POD)の活性が,米の鮮度が低下するとともに失われることに注目して,米の鮮度を判定しようとするものである。PODの酵素活性により発光する化学反応を利用して玄米を観察すると,新米や低温貯蔵米など鮮度が高いものほど発光が強く,古米や室温貯蔵米など鮮度の低いものほど発光が弱いことが見いだされた。玄米の発光強度分布から新米と古米の混合米の判別も可能である。米の消費者にとっては力強い味方となり得る分析法といえよう。
【2P71】  化学発光イメージング法による玄米のペルオキシダーゼ分布画像化と
      その鮮度評価への応用
 

  (山形県企業振興公社・生物ラジカル研究所) ○野田博行・大矢博昭 
   [連絡者:野田博行,E-mail:noda@yat.ymgt-techno.or.jp]


 昨今,農産物における禁止農薬使用問題にみられる食の安全性に対する意識の欠如や米の産地偽装,古
米の混入にみられる社会的モラルの欠如など生産者や流通業者に対し,消費者から厳しい目が向けられて
いる。このような背景から,我々は新米古米の判別や貯蔵状態の評価などを目的に,電子スピン共鳴法(
ESR)法や蛍光イメージング法を用いる米の鮮度評価技術の開発を行ってきた。ESR法は非破壊で計測でき,
感度も高いが装置が高価であること及び鮮度低下が進むと判別できないという問題点がある。また,蛍光
イメージング法は非破壊かつ簡便,安価な汎用装置として有用であるが,感度の点でESR法よりやや劣ると
いう問題点がある。そこで,さらに高感度な米の鮮度評価技術の開発を目指し,ペルオキシダーゼ(POD)
活性を指標とした化学発光イメージング法の開発を行った。
 本研究は,米自身に存在する酵素の一つであるPODが鮮度の低下と共に失活することを利用して米の鮮
度を判定しようとするものである。この研究の中で,汎用の化学発光試薬であるルミノールと過酸化水素
を用い,POD由来の発光画像を計測すると,簡便,迅速,高感度に玄米の鮮度を評価できることを見出し
た(図参照)。すなわち,新米や低温貯蔵米など鮮度が高いものほど発光強度が高く,古米や室温貯蔵米
など鮮度の低いものほど発光強度が低いことがわかった。また,画像の発光強度分布から新米と古米の混
合米の判別も可能であることがわかった。発光イメージング法は,ESR法に比べれば安価であるが蛍光イメ
ージング法に比べると若干割高になることから,新米・古米混合米の判別や多試料同時計測への応用が期
待できる。汎用には,安価な微弱発光計測装置を用いることが望ましいと思われる。

図 玄米由来のペルオキシダーゼを指標とした鮮度評価のしくみ