【3P63】 キャピラリーフローリアクターを用いる高温水溶液反応の新しい高速紫外可視吸光光度法の開発
(阪府大院工)○川村邦男
[連絡者:川村邦男,E-mail:kawamura@chem.osakafu-u.ac.jp]
生命の起源の問題は現在もサイエンスのフロンティアである.生物の系統に関する研究や化学進化実験に
よる最近の成果は,生命は深海底熱水噴出孔のような超高温の海水中で誕生したことを支持している.ところ
がこのような環境では生体高分子が遺伝情報を担ったり酵素機能を発現することは不可能のように思われる.
これを検証するためには高温水中での化学反応を調べなければならないが,そのための方法は不十分であった.
とくに高温下では化学反応は非常に速くなるので,数秒間以内に起こる過程を調べることは困難であった.そ
こで,高温水中における化学反応を研究するための新しい高速追跡法(KKT法)をこの数年間に開発してきた.
KKT法の原理は,高温に加熱した反応器に高圧ポンプで蒸留水を送り,この流路に試料を注入して短い時間
だけ加熱し,これを採取して高速液体クロマトグラフィーなどで分析するものである.溶融シリカキャピラリ
ーを反応器として用いた結果,315℃までで0.002〜150秒間の反応を追跡できる方法を確立した(特許3378936)
本法は短時間の反応を追跡できる点で世界最高性能である.またKKT法の実用性と信頼性を核酸やアミノ酸の
熱安定性を追跡する研究を通して実証した.さらにKKT法の原理を応用して,キャピラリー中を通過する試料
の紫外可視光吸収スペクトルをその場測定する装置を開発した(図).この方法を用いて300℃までの吸収ス
ペクトルを測定できた.以上の方法は,生命の熱水起源を検証する研究だけでなくもっと一般的な反応に利用
できる.例えば環境汚染物質を熱水で処理する反応の研究に利用できるので,環境や資源循環分野などで波及
効果が期待される.
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