リボソームを展開液として用いた新しいバイオクロマトグラフィー
(北大院理1・北大院地球環境2・産総研/中部大院工3・北大院薬4)○古月文志1・
長谷部 清2・田中一彦3・大野雅子4・加護直樹4
「連絡者:長谷部清、電話:01-706−2258」
細胞は、最近では、言うまでもなく機能性商品となりつつある。商品としての細胞が、通常、種類別に、又は機能別に分けられてから提供される。目的細胞の分取は、通常、抗原一抗体反応を利用した分離法が利用されることが多い。なかでも、抗体をクロマトグラフィーの固定相に修飾し、適切な展開溶液で、混合細胞をこの抗体固定相を充填した分離カラムで展開・分離するシステムとしてのクロマトグラフィーと、抗体を磁気ビーズに固定化し、混合細胞から目的細胞をこの抗体磁気ビーズに結合させた後、この抗体磁気ビーズ/目的細胞を磁気の力で分取するシステムとしての磁気細胞分離法が主流となっている。抗原一抗体反応を原理とする細胞分離法は、選択性が高いと言う長所を持っているが、選択範囲が極めて狭いと言う欠点も持っている。そこで、1回の分離で、多種類の細胞を同時に分けることが出来る斬新なバイオクロマトグラフィーの開発を試みた。本研究のキーポイントとしては、リボソームを展開溶液として用いることである。「モデル細胞(小胞体)」とも言われるリボソームは、医薬品や化粧品などのバイオ関連物質の研究によく使われている特殊な製品である。分離の分野では、例えば、高速液体クロマトグラフィーで、リボソームを固定相として利用する研究、いわゆる、「リボソームクロマトグラフィー」が報告されたものの、リボソームを展開液として用い、タンパク質や細胞などの分離に応用された研究は現存までほとんど報告されていない。本研究では、先ず、通常の多層リボソームをサイジングし、均一サイズの単層リボソームを調整することにより、リボソームを高速液体クロマトグラフィーの展開液として使用することを可能にした。また、通常タイプの逆相型充填カラム(ODS−シリカ)を用いた場合、このリボソームを展開液として用いた液体クロマトグラフィーでは、血清中の免疫ロブリン(IgG、IgA、IgM、IgD及びIgE)を容易に分けることが出来ることを確認した。また、低圧タイプのカラムを用いることによりモデル細胞の分離も可能であった。このような新しいタイプの高速液体クロマトグラフィーは、バイオ関連物質の分離・精製・回収等に応用できることが期待できる。
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