◆医療・生命◆   病気の診断薬として期待される
          機能的MRI造影剤の開発


 MRIは,生体内の断層画像を得る方法で,病理学的構造が詳細に画像化できるため,画像診断法として幅広く活用されている。しかし,MRIでは人体中の水素原子からの核磁気共鳴信号を利用しているが,信号強度の変化が得られない場合には造影剤を使用する。通常使用される造影剤であるガドリニウム錯体に亜鉛イオンが配位するようデザインし,てんかん発作・脳虚血等の病態で多量に放出される亜鉛イオンを感度よく検出することができた。このような機能的MRI造影剤の開発は,病気の診断薬をはじめとして,臨床医学への大きな貢献が期待される。

          新規亜鉛イオン応答性MRI用イメージングプローブの開発

   (東大院薬1・科技団 さきがけ2) ○花岡健二郎1・菊地和也1,2・長野哲雄1
                     [連絡者:長野哲雄, 電話:03-5841-4850]


 MRI (magnetic resonance imaging)は、生体内の断層画像を得る方法であり、近年臨床では、病理学的構造が詳細に画像化され、画像診断法として幅広く用いられている。MRI装置は、人体内の水や脂肪、その他の成分に含まれている水素原子から核磁気共鳴信号を得て画像化している。近年、より感度良く撮像するためにMRI造影剤が頻繁に使用されている。広く使用されているMRI造影剤として、ガドリニウム(Gd3+)の錯体が挙げられる。Gd3+に配位した水分子から強いMR信号が生じるため画像コントラストを高める。つまり、Gd3+への水分子の配位数を制御することで、MR信号を強めたり弱めたり変化させることができると考えられる。
 本研究では、Gd3+錯体のキレーター部位の水の配位数が生体内のターゲット分子と反応して変化させるようデザインすることで、生体内分子を捉えMRシグナルが変化する機能的MRI造影剤の開発を行っている。まず、てんかん発作・脳虚血等多くの病態で多量に放出されることが報告されてきた亜鉛イオン(Zn2+)をターゲット分子として選んだ。プローブのデザインには、Gd3+錯体にZn2+の配位構造を組み込むことで、Zn2+がGd3+錯体に配位しGd3+への水分子の配位が変化するようデザインした。開発したプローブは、Zn2+が存在すると図の様にZn2+とプローブが1:1錯体を形成し、ガドリニウムに配位していた水分子を追い出す。この結果、MRシグナルをZn2+特異的に変化させることが示された。生体内分子を捉える機能的MRI造影剤は、病気の診断薬として、さらには病的状態のメカニズム解明等の臨床医学への大きな貢献を果たすと考えられる。本研究はこの機能的MRI造影剤開発のリードとなりうると考えられる。