◆生活文化・     口中の齲蝕細菌を調べて虫歯予防
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 口の中の様々な細菌と,細菌の産生する多糖の塊である歯垢は,虫歯の原因であり,これを口腔内から減らすことが虫歯予防に重要である。歯垢生成に働く齲蝕細菌が,口の中にどのくらいいるのか,食後の歯磨きや口腔洗浄によりどのくらい減らせたかは,見た目では分からないので,歯垢中の齲蝕細菌の量と種類を調べる方法を開発した。現在,菌の検出・同定に利用されているDNA診断は,長い時間と労力を必要とするのに対し,PCR(遺伝子増幅技術)とマイクロチップ電気泳動を組み合わせることによって,病原因子の遺伝子を短時間で高感度に検出することができた。

     マイクロチップ電気泳動によるう齲しょく蝕細菌遺伝子dexの検出

     (昭和大 薬1、歯2)○唐沢浩二1、荒川秀俊1、五十嵐武2、後藤延一2、前田昌子1
                          [連絡者:唐沢浩二、電話:03-3784-8194]

 いつまでも健全な歯を維持することは、からだ全体の健康や生活の質(Quality of life)を高めるうえで、とても重要なことです。齲蝕(虫歯)は、だれもが一度は経験したことがある病の一つではないでしょうか?その虫歯の原因は様々ですが、なかでも、歯の表面にデンタルプラーク(歯垢)が蓄積することがとても重要な原因と考えられています。歯垢とは、口腔に棲息する多くの種類の細菌と、細菌が産生する多糖の塊のことです。齲蝕細菌(ミュータンス菌とソブリヌス菌)は、砂糖を利用してこの歯垢をより強固にし、その中で酸を作りだして歯を溶かします。これが虫歯の始まりです。現在、虫歯予防の1つとして、食後の歯磨きや口腔内洗浄による歯垢の除去が有効な方法とされています。しかし、どのくらいの菌を減らせたかは見た目では分かりません。そこで私達は、菌の種類や量を調べるための方法を確立し、虫歯予防に役立てようと考えました。
 現在、菌の検出・同定にはDNA診断が利用されています。しかしその方法は、長い時間と労力を必要とするため、実際の臨床での使用は困難でした。今回私達は、歯垢中の齲蝕細菌を迅速で高感度に検出するため、この菌の病原因子の一つであるデキストラナーゼ遺伝子(dex)に焦点を当て、遺伝子増幅技術(Polymerase Chain Reaction)とマイクロチップ電気泳動とを組み合わせた虫歯予防のDNA分析法を確立しました。その方法は図に示すように、歯垢から菌を採取し、次に齲蝕細菌に含まれるdex遺伝子のみをPCRにより特異的に増幅し、高分離能ポリマーを用いたマイクロチップ電気泳動装置で解析する方法です。操作時間はPCRで約2時間、マイクロチップ電気泳動では約90秒と迅速でした。検出限界はDNA量として20fgと高感度でした。現在、口腔内での菌の検出についてさらに検討を行っています。