◆生活文化・    微量元素を分析してネギの産地を判別する
 エネルギー◆


 野菜や肉などの産地を偽って販売する事件が頻発している。ここでは,ネギについて,国産であるか中国産であるかを識別する方法を検討した。ネギに含まれる22の無機微量元素を測定し,その濃度パターンを統計学的手法により解析した。その結果,国産ネギと中国産ネギとの間に,濃度パターンの違いがみられ,その識別が可能であることが分かった。現段階では,まだ中国産のデータ数が少ないため,更に多数のデータを集め,より信頼のおける判別法を目指している。

     微量元素組成によるネギの原産国スクリーニング判別技術の開発

                    (独立行政法人 食品総合研究所)○有山 薫、堀田 博 
                          [連絡先:有山 薫、電話:0298-38-8059]

 近年、海外からの生鮮野菜等の輸入急増がその国内価格を下落させ、農家の経営を大きく圧迫している。昨年にはネギを対象とした暫定のセーフガードが中国に対して発動されたが、正式なセーフガードの発動は見送られている。このような情勢に対応し、国内農家の優位性を保つためには、JAS法に基づく原産地表示を徹底させると共に、適正に表示がなされているかどうかを検証する技術の開発が必要である。このような行政部局からの要請に応え、当研究室ではネギの原産国判別技術の開発を目的とした研究を平成13年度から3年計画で行っている。また、最近問題になっている食品表示の偽装を防止する上でも原産地を判別する技術の開発は要望されている。なお、本研究ではネギ中の無機元素組成により、迅速かつ簡便にネギの原産国をスクリーニング判別できる技術の開発を目指している。現在そのためのデータ蓄積をしており、これまで分析した国産44産地46件および中国産3産地10件のネギについて得られた結果を報告する。

 ネギ中の22無機元素濃度を測定し、
多変量統計解析を行った。図はその
内の主成分分析の結果の1部である。こ
れだけでは完全に国産か中国産かを判別
する事は出来ないが、線型判別関数によ
る判別では分ける事が出来た。しかし、
中国産ネギの分析点数がまだ充分で
ないため、予測に用いるにはさらに
データを蓄積する必要がある。
 今後は特に中国産についてデータ
を蓄積し、信頼性の高い線型判別関
係式を作成していく予定である。同
時に測定対象元素を絞り込み、迅速
かつ簡便に原産国を判別できる技術
の開発を目指す。
図 22無機元素濃度による主成分分析の結果