◆環境・防災◆   焼却場排ガス中のダイオキシンの
           
迅速分析法を目指す

 最悪の環境汚染物質のひとつであるダイオキシンの分析は社会から広く求められている。しかし,今日の通常の分析法では,多大な測定時間やコスト,それに熟練を必要とする。本研究では,試料を焼却施設の排ガスに限定し,その迅速,安価な分析法を目指した。排ガスからテナックス管に吸着したダイオキシンを加熱脱離し,超音速分子ジェットとして質量分析計に導入した後,特定の波長のレーザーを照射することにより,特定のダイオキシンの一部の物質のみをイオン化して分析することができる。これにより極めて迅速なダイオキシン毒性の評価が可能となった。

  ダイオキシン分析のための超音速分子ジェット/多光子イオン化/質量分析装置の開発

                           (九大院工)○松本純一・今坂藤太郎
                           [連絡者:今坂藤太郎, 電話:092-642-3563]

  ダイオキシンが社会問題となって久しいが、その実態がきちんと把握されているとは言い難い。今後、様々な視点からデータを蓄積し議論することになるであろうが、そのデータを得るために用いた手法の長所と短所も同時に理解しておくことが必要である。現在、ダイオキシン分析の公定法として、高分離能ガスクロマトグラフ/高分解能質量分析装置が用いられている。しかし、この方法は、前処理が煩雑で、装置も高価であるため分析が行える機関が限定されている。
  本研究で用いる手法は、上記の公定法に取って代わるものを目指している訳ではない。簡易分析法として提案されている他の方法のほとんどがそうであるように、精度は多少劣るものの、安価で迅速にダイオキシンの量を見積もることができる方法である。本法では、基本的に測定対象を焼却施設からの排ガス中のダイオキシン類に絞っている。サンプリングは、テナックス管を用いて排ガス中の物質を吸着させることで行う。そのテナックス管を分析装置に移し、加熱することによって、吸着した排ガス中の物質を脱着させ、超音速分子ジェットとして真空チャンバー内に導入する。このとき、レーザーの波長を特定の波長にセットすることで、その波長に対応した特定の物質のみイオン化(検出)することができる。塩素が多数存在するダイオキシンの一部は、その濃度が分れば、全体のダイオキシン毒性を相関係数0.99という高い精度で推定できるので、全ての物質を検出する必要はない。今後、本法の高感度化が実現すれば、サンプリング数分で、30分以内に、その場で分析結果を提示することも夢ではない。