◆環境・防災◆  セラミックスの助けで排水の悪臭のもとを断つ
 生活排水や工場排水に含まれるアンモニア及び硫化水素は,タンパク質の分解や腐敗により自然に発生する物質であるものの,悪臭の二大原因物質であるため,効率的な脱臭・分解除去が望まれる。安価で省力化及び無害化可能なシステムとして,著者らは,酸化還元反応を触媒する新しいセラミックス焼結体を開発した。このセラミックスを用いることで,次亜塩素酸イオン共存下で水中の硫化水素を効率的に分解することができた。又,アンモニアについても25%の除去が認められた。光触媒等の併用による除去効率の向上を目指しているところである。
【3P1−16】     セラミックス共存下での次亜塩素酸塩による水質浄化

 (一関高専・レーベン1・三協テクノ2)○小田嶋次勝・高橋良夫・内山良信1・各務祐英2 
 [連絡先:小田嶋次勝,電話:0191-24-4776]
 最も身近に係わりをもつ生活排水,あるいは工場排水中に含まれるアンモニアおよび硫化水素は悪臭の二大起因物質とされ,これらの物質は人間活動にとって必要不可欠な栄養源であるタンパク質の分解あるいは腐敗によって自然に発生してくる。 悪臭物質の脱臭・分解除去技術としては,適用業種によって洗浄法,吸着法,生物脱臭法,消臭剤法など種々開発されているが,施設・設備として大型のものが多く,中・小規模の処理施設には適切ではない。手軽で安価に設置でき,省力化および無害化の可能な新しいシステムの開発が切望されている。
  本研究で開発したセラミックスは,シリカ(SiO2),アルミナ(Al2O3),ジルコニア(ZrO2) を主成分とし,これに10〜17%のアルカリ及びアルカリ土類金属の酸化物を添加,他に鉄及びマンガンの酸化物を担持させ,1400〜1600℃で焼結すると,多孔質で,極めて強靭で,安定な構造を有する焼結体を得る。このセラミックスは水中でアルカリ成分を溶出して溶液のpHを上昇させ,この溶液に塩素(1〜2ppm)を存在させると次亜塩素酸イオン(ClO-)が生成し,セラミックス表面で鉄,マンガンの触媒作用によって酸化・還元反応が起こり,有機物質及び無機物質を無害化,安定化させることができる。例えば,水中の硫化物イオン(S2-)は,セラミックスを用い,2%次亜塩素酸塩を14cm3/minの流量で添加すると45分以内でほぼ分解され硫酸イオンとなった。
一方,アンモニアは,次亜塩素酸塩を多量に添加すれば分解されるが,数倍程度の添加では殆ど分解されず,セラミックスを共存させる事により25%の除去が認められた。さらに光触媒を併用する事により,大幅に除去率の向上が期待できる。