◆環境・防災◆ ダイオキシン類分析用標準物質はこのようにして
        製造された
 土壌中のダイオキシン類を信頼性高く分析するための土壌標準物質を日本分析化学会が開発した。本開発は新エネルギー・産業総合開発機構の委託事業として行われた。ここでは標準物質の製造に関わるところを中心に報告する。原料土壌は某都市のごみ焼却炉付近の山林から0〜3cm深さと3〜10cm深さの2種類の各150kgを採取し,夾雑物を除去した後,風乾を行った。一部はアルミナ製ボールミルで粉砕し,106μm以下の粒径の土壌を撹拌機で均質に混合した。その後,含水率,粒度分布と4元素の分析による均質試験を実施し,15機関で共同分析を行った。
【3H11】     ダイオキシン類分析用土壌標準物質の製造
(環境テクノス(株))○濱本亜希 鶴田 暁[連絡者:濱本亜希,電話:093-883-0150]
 標準物質は「分析値の正確さを伝達する媒体」と言われている通り,正確さを保証するための重要なツールである。特に環境分析分野では,複雑な試料中の微量物質を対象としていることが多く,目的物質の濃度が低いほど分析値の信頼性も乏しいと言われている。その中でもダイオキシン類分析は,高度な機器と長い分析工程を要するため,標準物質による分析値の管理が不可欠である。
 このような背景から,ダイオキシン類分析用土壌標準物質の開発が求められていたが,(社)日本分析化学会では,平成10年度新エネルギー・産業総合開発機構委託事業の一つである「組成型ダイオキシン類分析用土壌標準物質の開発」を(財)化学物質評価研究機構より再受託し,開発を行うための小委員会を発足させた。当社はその委員会のメンバーとして参画すると共に,標準物質の製造を担当することになった。
 原料の土壌は,ある都市のごみ焼却炉付近の山林から採取し,0〜3cm深さのものを高濃度用,3〜10cm深さのものを低濃度用とした。それぞれ150 kgずつを風乾台に広げ,土塊を細化して草の根等の夾雑物を除去し,風乾によって水分を10%近くまで低下させた。その後250μm目及び106μm目の電気振動式篩分機による篩い分けを行い,106μm目通過分は捕集し,未通過分はアルミナ製ボールミルで粉砕して再度篩い分けを行った。捕集した106μm以下のものを回転翼式混合攪拌機で混合して均質化した。この均質化した試料から10個の分析試料を採取して,含水率,粒度分布及び元素(Mn, Cu, Zn, V)分析を行い,これらの標準偏差や変動係数を求めて均質性の評価を行った。その結果,均質性は良好であることがわかったので,この試料を用いて15ヶ所の分析機関による共同実験が行われた。
 各分析機関から報告された共同実験データについてRobust法Z-scoreによる異常値の棄却後,統計解析によって不確かさ等が求められ,高濃度土壌のTEQは124±11(pg/g),低濃度土壌のTEQは41.4±3.9(pg/g)の認証値が決定された。
 このダイオキシン類分析用土壌標準物質の開発は,前述した問題点の解消に大きく寄与するものと思われる。