◆新素材・先端技術◆
      物質の状態を解き明かす二次元高速液体クロマトグラフィー
 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は,優れた分離分析法として様々な分野で用いられている。分離のされ方は物質の性質や状態により異なるので,物性評価法としても有用である。異なった分離メカニズムを持つHPLCを直列につなぎ,二次元HPLCとすれば性能が著しく向上する。そこで著者らは,まず試料をイオン交換により分離し,分離された成分を更にサイズ排除クロマトグラフィーによって分離した。本法により試料の電荷と大きさを決定することが可能となった。今後本法により多くの物質の定性・定量が可能となり,基礎的物性測定に大きく貢献すると思われる
【2P1−36】   化学種分析システムとしての高速二次元HPLC

 (日大生産工・東北大大教セ1)○中原 敦・渋川雅美・斎藤紘一1
 [連絡者:渋川雅美,電話:047−474−2554]
 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は,すぐれた分離法として多くの分野で使用されているが,その保持挙動は溶質の物性や溶存状態を反映するので,化学種分析の手段としても有用である.二次元液体クロマトグラフィー(LC/LC)は,2つの異なる分離カラムを組み合わせることにより,複雑な組成を持つ試料の成分を分離するシステムとして開発された.LC/LCは,溶質の物性に関して2つの独立した情報を与えるので,より有効な化学種分析システムとして利用できるものと期待される.しかし,これまでこのような目的にLC/LCを利用しようとした試みは少なく,分析の高速化は図られてこなかった。
 本研究は,第2段のカラムに機械的強度にすぐれた内容積の小さいカラムを使用することにより第2段での迅速分析を可能にし,繰り返し分析を行ないうる高速二次元HPLC分析システムの構築を目指したものである.これまでに,いくつかのHPLC分離系の組み合わせについて検討した結果,第1段でイオン交換クロマトグラフィー(グラジエント溶離),ついで第2段でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行ない,溶存化学種の電荷とサイズを決定できるシステムを構築した。図はこのシステムを模式的に示したものである。特に第2段のSECにおいては1分以内の分析を繰り返し精度よく行なうことが可能である。高速二次元HPLCは,溶質の疎水性や,酸解離定数などの物性定数を決定する方法としても有効であると期待され,現在開発を進めている。