◆新素材・先端技術◆
    培養細胞を板上にパターン化したバイオアッセイデバイスの試作

 培養細胞を用いるバイオアッセイ法は,薬剤の毒性や効果のスクリーニングを行うなどの目的で様々に利用されている。細胞をデバイス基板上に自由にパターン化し,その活性を測ることができれば,細胞をセンサ素子として利用する小型デバイスの作製が可能になると期待される。本研究では,微小の「ハンコ」を用いてガラス基板上に細胞接着性のタンパク質をパターン化して貼り付けておき,そのうえで動物細胞を培養して細胞のパターンを形成できることを明らかにした。又,電極を用いて細胞の呼吸活性を測ることで細胞の活性が調べられることも分かった。
【2F10】    動物細胞のマイクロパターンニングと電気化学的活性評価

(東北大院工)◯末永智一・田光公康・梶 弘和・瀧井有樹・西澤松彦
〔連絡者:末永智一,電話:022−217−7209〕
 培養細胞を用いるバイオアッセイが,薬剤の毒性試験や薬理効果の確認など多様な目的でおこなわれている。細胞の生理活性評価は,蛍光染色法や各種発色法で行うのが現在の主流であるが,我々は最近,電気化学的に呼吸活性を計測する方法についても検討を進めている。これは,微小電極を細胞に近接させて呼吸による酸素の消費量を評価する方法であり,細胞を染色するなどの事前処理が一切不要である。ところで,この様な動物細胞をセンサ素子とするチップデバイスの開発には,細胞をデバイス基板上の任意の箇所に固定しパターニングするための技術開発も必須である。最近,細胞接着の機構が分子レベルで明らかにされ,細胞接着タンパク質のパターニングによる細胞パターンの作成が工学的にもホットな話題となっている。
 本研究では,マイクロスタンプ(自作の微小なハンコ)を用いて細胞接着性タンパクであるフィブロネクチンをガラス基板上にパターンニングし,その周囲を細胞非接着性のアルブミンというタンパク質で被覆した。このパターン培養基板上でHeLa細胞を数時間培養すると,スタンプの形状に一致した細胞のパターンが形成された。パターン化した細胞周辺の酸素濃度を微小電極でマッピングしたところ,細胞表面で局所的に酸素濃度が低下していることが分かった。これは細胞の代謝(呼吸)による酸素消費を反映しており,細胞が呼吸活性を保持してパターン固定されたことを示す結果である。バンド状や島状の細胞パターンを作成して系統的に評価した結果,細胞伸展への制限が厳しい島状パターンでは呼吸活性が50%程度に低下してしまうのに対し,バンド状パターンでは通常の培養シャーレの場合に相当する活性が観測された。
 HeLa細胞以外にも,ニワトリ胚心筋細胞やPC12(神経細胞)などについても同様の方法でパターン化を試みている。マイクロアレイ電極基板や,3次元微細加工を施したシリコン基板などと組み合わせることで,細胞各々の機能や特徴を活かしたチップデバイスの柔軟な設計が可能である。