◆環境・防災◆  水生植物が環境ホルモン浄化の救世主となるか
 焼却炉,船底の塗料,生活排水,人の活動から排出される内分泌撹乱化学物質,いわゆる環境ホルモンは,深刻な社会問題となっている。マツモなどの水生植物はビスフェノールAなどの代表的な環境ホルモンを効率的に吸収除去できることが分かった。この方法は,環境ホルモンの溶けた水に植物を浸漬するだけという極めて簡便な手法であり,加えて天然物を用いるという点で環境に優しい除去法ということができる。除去効率は植物の種類等によって異なり,今後の比較検討の結果が楽しみである。
【1E30】    水生植物による環境ホルモン物質の吸収及び回収

         (神奈川工科大) ○仲地史裕・斎藤貴
           [連絡者:斎藤貴,電話:046-291-3113]
 環境ホルモン化学物質(内分泌攪乱化学物質)は,生体内ホルモンの分泌を攪乱する作用が明らかとなり,水域に生息する生物の性別転換や奇形などはそれらの物質が原因であるとする指摘もされている。そのため,湖沼や河川などの水域に存在するこれらの化学物質の浄化技術は今後の重要な課題となることが推察される。そこで,水域の水質の修復・改善を目的に,我々は植物を化学物質の吸収・回収媒体とした環境ホルモン化学物質の浄化法(ファイトリメディエーション)について検討を行った。
 環境ホルモン化学物質として,ビスフェノールA及びフタル酸エステルを用い,水生植物には,スクリュー・バリスネリア,アナカリス,カボンバ,アンブリア,マツモを用いて吸収挙動を比較検討した。ビスフェノールA水溶液(10-5M)500mlに5gの水生植物を浸漬したところ,いずれの植物においても時間と共に水中のビスフェノールAが減少し,植物に吸収されることが認められた。3〜4時間の浸漬で40%以上,6時間後では約50〜80%のビスフェノールAが吸収除去され,特にスクリュー・バリスネリア(トチカガミ科)は吸収速度がもっとも高く,3時間後には80%の減少が観察された。また,吸収速度はやや劣るもののマツモ(マツモ科)に関しては,24時間後には水中のビスフェノールAをすべて除去できることが見出された。フタル酸ジ-n-ブチル(4x10-6M)に関しては,アナカリス(トチカガミ科)及びカボンバ(スイレン科)による吸収挙動を調べたところ,浸漬2時間後,約40〜50%の吸収が認められた。現在,他の水生植物についても比較検討を進めており,吸収効率の高い水生植物を見出したいと考えており,天然物を用いた環境に優しい浄化法を目指したい。