◆環境・防災◆  豊富な栄養塩を含む海洋深層水を探る
 海洋深層水は200m以深の海水のことをいう。この海洋深層水は,表層の海水に比較すると清浄で栄養塩が豊富に含まれるため,富山県では1995年より本格的な取水に踏み切り,魚介類稚仔の餌となる植物プランクトン等の大規模な培養実験を計画している。海洋深層水は,その水質が年間を通じて表層の海水に比べて変動が小さいと考えられていた。しかし,1996〜1997年にかけて取水した海洋深層水の栄養塩濃度は,表層水に比べて5〜20倍高濃度であった。この変動の要因を正確に把握するため,詳細に濃度の変化を分析した。
【1D07】    海洋深層水中の栄養塩類の変動分析

(サヌキ工業(株)・富山県水産試験場1)○島田勝久・小善圭一1・讃岐三之助
[連絡者:島田勝久,電話:042-555-1310]
 海洋深層水(以下、深層水)は,光が届かない深海(概ね200m以深)の海水で,表層海水に比べ清浄で,水温が低く,また、植物プランクトンや海藻の生育に欠かせない栄養塩類(窒素、リン、ケイ酸など)が豊富に含まれている。また,その水質は,年間を通して変化が少ないものと考えられている。このような性質を持っている深層水は,深海性魚介類の飼育水,藻類の培養液、発電所の冷却水,人体へのミネラル補給源など様々な分野で利用できる資源として期待されている。
 富山県では,1995年より富山湾深層水(水深321m)の本格的な取水が開始され,その多面的な利用法に関する研究が進められている。富山湾深層水中の栄養塩を季節毎に測定された1995年以前の結果によると,水深200m以深での栄養塩濃度は,四季を通じて比較的変化しないという傾向があった。しかし,1996〜1997年にかけて取水された深層水中の栄養塩の分析結果では(休日を除く1日1回の分析),表層海水の栄養塩濃度に比べ5〜20倍高い値が得られ、また,これまで得られた結果以上に大きな濃度変動が認められた。この変動の要因は今のところ明確になっていないので,深層水中の栄養塩濃度の変動分析をより詳細に行うことが必要となっている。また,現在,富山県水産試験場では,深層水を用いて魚介類稚仔の餌となる植物プランクトンや海藻の大規模な培養実験が計画されているが,この実験を行う際にも,また,利用後の深層水の周辺環境へ与える影響を考える上でも,深層水中の栄養塩濃度の変動を正確に把握することが重要なこととなる。