◆生活文化・エネルギー◆  血中のカテキンを高感度にはかる
 カテキン類はお茶に含まれるポリフェノール類の一種であり,その抗酸化作用,血中コレステロール低下作用,血圧上昇抑制作用,抗がん作用,虫歯予防などの生体に有益な様々な活性が注目されており,体内におけるカテキン類の動態を調べることは意義がある。しかしながら,従来の分析法では体内におけるカテキン類の動態を調べるには感度が不充分であった。本研究では,カテキン類を高感度に定量するための方法を開発し,従来法に比べて20,000倍も高感度に血中のカテキン類を定量することができた。
【1C29】   マイクロボアカラムを用いた電気化学検出HPLCによる
          飲茶後の血中カテキン類の高感度分析

(東京薬大・薬)○宮下尚人・小谷 明・楠 文代
[連絡者:楠 文代,電話:0426−76−4549]
 茶中に多く含まれるカテキン類は,古くから茶の渋み成分として知られていたが,近年,抗酸化作用,血中コレステロール低下作用,血圧上昇抑制作用,抗がん作用,虫歯予防などの多彩な作用を有することが報告され,動脈硬化など生活習慣病の予防やがんの抑制に関わる点で世界的にも注目されている.こうしたことから,カテキン類の体内における動態の分析には大変興味がもたれている.
 従来,カテキン類の分析については一般に紫外可視吸光検出高速液体クロマトグラフィー(UV−HPLC)が利用されているが,茶中のカテキン類が体内にどの程度吸収され,どのように代謝されるかについて測定するためにはUV−HPLCは充分な感度を有していない.
 カテキン類はその構造にジまたはトリヒドロキシフェニル基を有しているため,容易に酸化反応を起こし,これが抗酸化作用に寄与していると考えられている.またこの酸化反応を利用して電気化学検出器による検出が可能である.すでに我々は4.0×250 mmのODSカラムを用いた電気化学検出HPLC(ECD−HPLC)によるカテキン類の分離定量を行っているが,マイクロボアカラムを用いることでさらに高感度化が期待される.
 本研究では,高感度な測定法として内径1.0 mmのマイクロボアカラムを用いたECD−HPLCにより血中のカテキン類分析法を開発した.その結果,本法では10 fmolのカテキン類を分析可能であり,これはUV−HPLCの20,000倍高感度な検出であった.血中のカテキン類はその一部がグルクロン酸抱合体または硫酸抱合体の型で存在するため,β−glucuronidaseおよびsulfataseで分解した後,遊離のカテキン類として定量した.