設立趣旨

分析化学的な研究課題は、科学技術の進歩発展に伴い、新素材・材料、地球環境・エコロジー、ライフサイエンス、医療・医薬品、法科学、生活・文化などの基盤を支える物質の化学分析全般に存在しています。特に、分析化学の基本となる分析技術の信頼性は、非常に重要であることが近年頓に認識され、世界的には試験所認定制度に反映されてきました。この制度では、主に試験所のマネジメント、分析技術者の技能及び分析機器の動作の信頼性が要求され、どれ一つも欠けてはならないことになっています。

特に、分析技術者の技能は熟練技術者から伝承することができますが、昨今、そのような熟練技術者が非常に少なくなり、技能伝承が著しく困難になっています。特に、化学分析の基盤をなす湿式化学分析技術については、危機的な状態にあります。

以上を踏まえ、本研究懇談会は、多分野の化学分析に対応することを目的として「分析化学技能研究懇談会」と称します。本研究懇談会は、分析化学の将来を担う研究者・技術者が信頼性の高い分析技術を体得し、安全な作業環境作りや操作管理が行えるように、分析化学的な課題を調査研究し、その解決に向けての教育指導を行うことを目的とします。

委員長(旧) 小熊幸一(千葉大学名誉教授)

入会のすすめ

精確な定量分析の基礎は湿式化学分析であり、機器分析の前処理としても適切な試料の溶解・分解操作による溶液化は不可欠です。しかしそれらの情報はどこから入手出来るでしょうか。主要成分(マトリックス)と分析種の多彩な組み合わせからなる試料を前に、如何に前処理を選択するか、機器の操作条件はどうやって最適化するか、データの整理は合理的か、など多くを知ることが必要ですが、論文や書籍も希少でノウハウを聞ける機会も少なくなりました。

本研究懇談会では現場での分析ニーズを受け止めて、分析化学技能に関する情報を提供して議論することを目指しています。具体的には、日本分析化学会年会での依頼講演や該当分野の個別講演会を開催します。またメーリングリストによるQ&Aなども計画しています。

精確な分析値に基づいた社会活動は国家の礎です。材料分析、環境分析、医薬品や食品分析などは、品質管理、素材開発、環境監視、有害物質規制など多くの分野に貢献しています。これらの活動を正しく機能させるためにも、本研究会の活動は意義深いと言えます。

本会は、日本分析化学会の会員でなくとも入会できますので、お手軽に参加出来ます。是非豊富な知識とノウハウを持つ会員のいる本会に関わってみませんか。

委員長(新) 上本道久(明星大学教授)