第2回分析化学東京シンポジウム

 昨年に引き続き、日本分析化学会関東支部と(社)日本分析機器工業会共催の「第二回分析化学東京シンポジウム」が、9月2〜4日の3日間にわたり千葉市の幕張メッセ国際会議状と国際展示場内会議室および幕張プリンスホテルプリンスホールで開催された。 日本のピッツバーグ会議を目指したこの企画は、本年も3000名以上の参加者を集め、内容に一つの方向性が見えてきた観がある。
 本年は「分析化学に関する、最新の研究成果と装置・機器の情報を同時に知る」目標をそのままに、昨年の反省にのっとって修正を加えた。 内容構成は、昨年と同じく特別講演2件、「分析情報と信頼性に関するシンポジウム」8講演、招待ポスター講演78件(第一回40件)、プログラムの詳細は、ぶんせき8号A37ペ−ジ(※編注:こちら)を参照されたい。

 特別講演では、野崎先生が海洋が地球環境をコントロ−ルするメカニズムを微量元素を含む物質循環で解説され、数万年をかけた海水循環が環境を穏和に保つ役割を果たしていることを示された。 また、坂田先生からは人工衛星からの観測で、地勢を含めた歴史的環境が明らかとなり、考古学上の新知見がもたらされまた、新たな遺跡の発見につながった例の紹介があった。
 スモーキングガンという言葉がある。発射したてでまだ煙が立ちのぼっている銃のように動かし難い証拠という意味がある。これらの壮大なスケールの特別講演の印象は、まさに世界観と歴史観を揺り動かすスモーキングガンであった。 そして、我々にこの認識をもたらした研究の進展を支えるものは飛躍的、しかし一つ一つは地道な技術の進歩であることが講演の「行間」に示され、また、明瞭に語られた事がまことに印象的であった。
 シンポジウム講演8件は、インターネットによる分析情報収集の実際、進展目覚ましいLC/MSの食品分野への応用情報を始め、分析値の信頼性についてはその実際からISOや試験所認定制度の紹介も含めたものである。 「分析値」の取り扱いに関する講演は、昨年に続いて、各分野における分析法バリデ−ションや制度管理等の考え方と実際、さらに進行する制度化を追った内容で行われた。超満員となった昨年を考慮し、本年は会場を広めにしたもののテ−マによっては会場に入りきらない盛況を呈した。
 本年のポスター発表は、「大学・公的機関から発信された研究シ−ズと企業とが出会う場」をイメージして、招待する主発表者を関東支部に所属する大学や公的研究機関の所属者とし、昨年はシンポジウム講演会場で行われて手狭であったため、国際会議場内に別会場を設けて件数も約2倍となった。 環境関係、センサー開発のテーマが多く、2日間とも盛況で会場を閉める時刻まで討論は続き、2時間のコアタイムは事実上倍になった。
 本年は、登録システムが昨年と異なったため全数を把握しきれなかったが、概算で昨年の参加数をクリヤーし、「賑わい」の実感は昨年を上回っていた。 同時開催の機器展の新技術説明会の参加者は、昨年の16.6%増、機器展自体も増加傾向にある。第一回で既に明らかであった相乗効果はここに定着したと見てよいであろう。
 第2回を迎え、このシンポジウムでは、分析機器の最新情報(機器展)に加えて、研究の最先端情報(ポスター)、現実の社会と分析化学との接点(シンポジウム講演)、そしてそれらの成果として新しい認識の地平を開く研究成果の紹介まで、それぞれの分野分けが明らかになりつつあるように思われる。 特に、2年連続してのシンポジウム講演の盛況は、特筆に値する。分析技術者にとって現在切実な問題となっている分析の信頼性確保や制度化について、情報が得られる場として評価してもらえたのではないかと理解している。
 分析化学に関する最新の研究成果、機器情報とともに、分析に携わる者が様々の局面で遭遇するあらゆる問題解決のヒントがある、文字どおりの“市場”(メッセ)として東京シンポジウムが成長し、広く役立つものとなることを関係者一同、切に願っている。

高田加奈子(大日本インキ化学)


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