◆生活文化・ 放射光X線を使ってトイレの抗菌セラミックスの作用を探る
エネルギー◆ |
||||||
最近の清潔志向を反映し,トイレをはじめとする衛生陶器において,表面に抗菌釉薬を施した抗菌セラミックスが広く普及している。しかし一方では,銀や酸化亜鉛などを含む釉薬が抗菌作用を示す機構の詳細は解明されていなかった。本研究では,シンクロトロン放射光X線を光源とするX線吸収分光法により,抗菌釉薬に含まれた銀や亜鉛の化学状態分析を行い,抗菌作用発現メカニズムの解明を目指した。その結果,銀は釉薬中において1価,亜鉛は2価で存在し,いずれもガラスのような状態で拡散した非晶質となっていることが明らかとなった。 |
||||||
【D2014*】 衛生陶器における抗菌釉薬に対するXAFS分析 (徳大総科1 ) ○沼子 千弥1・((株)INAX2) 井須 紀文2・山嵜 悟2・加藤 嘉洋2 |
||||||
抗菌製品は近年の清潔志向の影響により生活のあらゆる分野に広がってきており、トイレをはじめとする衛生陶器やタイル等の生活系セラミックスの抗菌化もすでに「当たり前」の技術となってきた。抗菌コーティングには様々な方法があるが、INAXでは銀や酸化亜鉛等の金属成分を強化した抗菌釉薬を塗布した後、高温で焼成することで、衛生陶器やタイルに抗菌性能を発現させることに成功している。特に銀は、抗菌効能が大きいこと、耐性菌ができにくいこと、安全性が高いことなど、非常に優れた特性を備えているが、従来の研究では、どうして銀を含む釉薬が抗菌効果を示すのか、そのメカニズムは解明されていなかった。 |
||||||
その結果、衛生陶器の抗菌釉薬中の銀の酸化状態は、Ag2OやAg3PO4と同じ1価であること、動径分布関数には第二配位圏のピークが出現しないことから、釉薬中にガラスのような状態で拡散した非晶質の状態で存在すること、銀の周り2.22Åに酸素が1.7個存在する局所構造を有することなどがわかった。一方、抗菌タイル中の亜鉛は2価であり、銀と同様に非晶質であるが、 Zn2SiO4に類似しており、亜鉛の周り1.96Åの位置に酸素が4個存在することがわかった。 |
||||||
![]() |
||||||