◆環境・防災◆  ガスセンサーによる排水中セレンの新しい簡易測定法の開発

 セレンは人体に対して必須元素であるが,適正量の範囲が狭く,過剰摂取により毒性を示すため,水質汚濁防止法により排水基準が規制されている。本研究では,セレン量を監視するため,セレン化水素を発生させ,それを検知するガスセンサーを開発した。原理は,セレン(IV)を含む酸性溶液に還元剤を添加し,発生したセレン化水素をガス検知器で測定する簡易な方法である。本法では高い定量性を示し,定量下限は排水基準の 1/10(0.009 mg/L)を達成している。分析時間は 10 分以内で,小型,安価なプロセスモニター法として十分使用に耐えうると期待される。

【A2013】         

水中セレン(IV)の簡易測定法の開発

(電力中研)  ○正木浩幸、大山聖一、佐藤一男
[連絡者:正木浩幸、電話:04-7182-1181]

 セレンは人体の必須元素であるがその適正量の範囲が非常に狭く、過剰摂取により高い毒性を示す。そのため、セレンを含む排水は水質汚濁防止法に基づく排水基準(0.1 mg/L)により規制されている。排水中のセレンを管理するツールとして、セレン濃度を現場で継続的に監視する自動測定機(プロセスモニター)の開発が求められている。そこで我々は、作業環境中のセレン化水素を検知するガスセンサーに注目した。これを応用して、セレン(IV)を含む酸性溶液に還元剤を添加し、発生したセレン化水素をガス検知器で測定する新たな簡易測定法を考案した(図1)。
 この測定法を評価した結果、セレン(IV)濃度0.01〜0.7 mg/Lの範囲において直線性の高い検量線が得られ、定量下限は排水基準の10分の1以下(0.009 mg/L)となった(図2)。分析時間は10分以内であり、迅速かつ高感度な測定が可能であった。この測定法の利点はガス検知器が小型・安価であること、試料溶液からセレンを気化分離するため夾雑物の影響を受けにくいこと、用いる薬品の種類が少なく管理が容易なことである。以上より、この簡易測定法はセレンのプロセスモニターへの適用が期待できる。

1. 水中セレン(IV)分析装置

2. セレン(IV)の検量線 (n=3)
(縦軸:検知器のフルスケールを1とした時の相対信号強度)