◆新素材・   食品有害ガス成分を家庭で測定できる小型質量分析装置の適用
先端技術◆

 近年,食品に使われる薬物の人体への影響が注目を浴びており,食品偽装や輸入冷凍食品からの毒物検出などと共に食の安全が大きく問われている。このような状況の中で食品中の有害物が家庭レベルで気軽に検出できる装置開発を目指し,従来大型の装置を必要とした質量分析装置の小型化を検討した。本研究では,市販の体積4 cm3 ,重さ 25 g の小型質量分析計を用いたガス分析装置を作製した結果,ガス成分の測定が可能であることが分かり,将来の小型化と携帯化により調理中蒸気からの食品中の有害物質検出の可能性が示唆された。

【Y2321】    

小型質量分析計を用いた携帯可能なガス分析装置

(京大・工)○松谷 広,中江 保一,山本 孝,河合 潤
[連絡者:山本孝,電話:075-753-5483]

 近年,農薬や食品添加物等,食品に使われる薬物の人体への悪影響が注目を浴び,無農薬や無添加の食品に対する需要が増加している.また最近では,食品偽装が牛肉加工業者から老舗料亭まで蔓延していたことが判明する一方で,輸入冷凍食品から毒性の物質が検出され,食の安全が大きく問われている.もし,各家庭で気軽に食料に混入している有害物質を検出できるようになれば,このような状況を打開することが出来るであろう.
将来,そのような各家庭での有害物質の検出において大きな力を発揮すると考えられる装置が本研究において作製した小型質量分析計を用いたガス分析装置である.
 質量分析を行うと,どのような物質がどのくらい存在するかを調べることが出来る.質量分析は真空領域で行われるため,質量分析を行う機械自体(質量分析計)と真空領域を作り出すポンプが必要であるのだが,今までは,質量分析計が大きいこと,また質量分析を行うには真空度の高い領域で検出を行う必要がありそのような真空領域を作るために大型のポンプが必要であることより,持ち運びすることは現実的に不可能であった.また,高価であるために,一般の家庭での質量分析装置の活用という術は現実的に考えられてこなかった.

 本研究で,体積4 cm3,重さ25gの Micropole TM(堀場エステック社)という世界最小サイズの小型質量分析計を用いたガス分析装置を作製し,実験を行ったところ,この装置では,従来の質量分析装置と比較し真空度の低い領域での測定能力が高いことが判明した.
 このことより,このMicropoleTMを用いたガス分析装置は質量分析計自体が非常に小型であるうえ,真空領域をつくるためのポンプも小さくて済むことから,携帯可能なサイズで,ガス分析が可能な装置の開発ができることを示している.よって,将来においては,この装置を用いて,図のように各家庭において,調理中に発生する蒸気から食品に混入する有害物質を検出することも可能であると考えている.

図 各家庭で有害物質の検出が可能に