◆新素材・   抗体を高効率 ・ 迅速に精製できるカラムを開発
先端技術◆

 抗体医薬品の需要拡大に伴い,抗体を効率よく迅速に精製する方法が必要になっている。これまでは,アガロースやガラスを担体に用いたカラムが用いられてきたが,結合容量や吸着特性の面で問題があった。そこで,本研究では,細胞膜の主成分であるホスホリルコリンに着目し,これをシリカゲル表面に固定化したカラムを作成した。その結果,このカラムは高流速条件でも高い結合容量を維持し,抗体の迅速な精製が可能であることがわかった。また,精製効率も高く,アルカリ洗浄での繰り返し使用も可能であった。市販のカラムの弱点を克服した新しいタイプのカラムとして期待される。

【P1113】    

抗体をハイスループットかつ高選択的に精製できるprotein Aアフィニティカラムの開発

((株)資生堂)○前野克行、平山綾、佐久間健一、宮沢和之 
[連絡者:前野克行、電話:045-590-6388]

 抗体医薬品の精製効率に対する需要拡大に伴い、高流速でも効率良く精製可能なハイスループット性の高いprotein Aアフィニティカラムが求められている。現在はアガロースを担体としたアフィニティカラムが主流だが、高流速条件において抗体の結合容量が低下するためハイスループット精製には不向きである。一方、高流速条件での精製に対応可能な担体としてシリカやガラスが用いられているが、担体表面へのタンパク質の非特異的吸着が多く、アルカリ洗浄にも弱いという問題点がある。
 そこで我々は細胞膜の主要成分であるホスホリルコリン(PC)に着目した。PCは高い生体適合性を持ち、PC処理を施すことにより表面に対するタンパク質の吸着を効果的に抑制できる。本研究ではこのPC基及びリガンドとしてrprotein Aをシリカゲル表面に固定化することで、ハイスループット精製に適し、かつタンパク質の非特異的吸着の少ないアフィニティカラム(PCカラム)を作製し、アガロースまたはガラスを担体とした市販アフィニティカラムとの性能比較を行った。

 その結果、市販のアガロース系アフィニティカラムは高流速条件で動的結合容量が大きく低下するのに対し、シリカを担体として用いたPCカラムは高流速下でも高い動的結合容量を維持し、ハイスループット性の高い担体であることが証明された(図)。また血清を用いた抗体精製評価において、カラム担体に対する非特異的吸着物の溶出量を調べた結果、PCカラムからの溶出物は市販アフィニティカラムに比べ極めて少なく、PC基の吸着抑制効果が充分に発揮されていることが確認された。アルカリ洗浄工程を組み込んだ繰り返し精製評価においても、抗体回収量の低減は見られなかったことから、シリカ担体でありながら優れたアルカリ耐性をもつことがわかった。本アフィニティカラムは、アガロース系及びガラス系アフィニティ担体双方の弱点を克服した新しいタイプのカラムである。