◆新素材・  DNAで連結した金ナノ粒子構造体による遺伝子検出
先端技術◆

これまで多くの金ナノ粒子を用いた研究が行われてきた。近年その特異的な光学的,電気的性質を利用した応用研究に進展している。その一つとして,DNAのハイブリダイゼーションを直接検出する方法を考案した。直径 12 nm の金ナノ粒子に異なった2種類の DNA を固定化し,正負一対の電極間の絶縁部分に固定化した。ここに固定化した2種類の DNA と完全に相補的な塩基配列を持つ DNA を添加すると,粒子間の距離が縮まることで電子移動が容易となり,電気抵抗が減少した。これにより DNA のハイブリダイゼーション過程を電気抵抗変化として直接検出できた。

【Y1212】    

金ナノ粒子・DNA構造体を用いた分子スイッチング

(山口東理大1・阪府大先端セ2) 床波志保1・西出幸晃2・○椎木 弘2・長岡 勉2
[連絡者:椎木 弘、電話:072-254-9875]

  近年、分子スケールエレクトロニクス、あるいは単一分子デバイスと呼ばれる新しい研究分野が誕生し、トップダウンまたはボトムアップ手法による新奇形状物質の作製やその規則的配置、パターン形成についての研究報告が多数を占めていたが、最近ではその特異的な光学的、電気的特性などを具体的に利用した応用に関する報告が主流になってきており、その実用的使用はいよいよ近い将来に迫ってきたようにも思える。特にナノスケール化することでバルクとは異なる新しい電気的、光学的機能を発現する様々な金属ナノ粒子に関する基礎、応用について多く研究されている。

 本研究室では金とチオール分子の結合を利用し、チオール分子をバインダーとして金ナノ粒子を絶縁基板上に二次元的に配置する方法を確立した。この方法によれば粒子はバインダーにより基板に固定化され、また隣り合う粒子同士はバインダーにより架橋されているため、バインダー分子長を選択することで粒子間距離を任意に調節して導電性を制御できる。そこで、本報告ではバインダーにDNAを用いて金ナノ粒子―DNA―金ナノ粒子のブリッジ構造を形成し、その分析化学的応用について検討した。正負一対の電極間の絶縁性部分に固定した50 nm金ナノ粒子を足場として、12 nmの金ナノ粒子でラベル化したDNAを固定化することで、ナノ粒子間にDNAを配置した(図)。そこに、ターゲットDNA(24塩基)を添加すると同時に電気抵抗は減少した。ターゲットDNAが12 nm金ナノ粒子A、Bに修飾されているそれぞれのプローブDNAと完全に相補的配列をもつ場合、ハイブリダイゼーションすることにより粒子間の距離は縮まる。同時に粒子間の電子ホッピングが容易になり抵抗が減少するものと推測される。この機構によりDNAのハイブリダイゼーションを電気抵抗変化として直接検出することが可能になった。