◆医療・生命◆   ダイヤモンド電極で脳内物質を測る

 ダイヤモンド電極は,極めて安定であるという材料特性に加えて,バックグラウンド電流が小さいため高感度な測定が可能であり,生体関連物質や環境中汚染物質などの微量分析への応用が期待される。本研究では,脳内での測定が可能なマイクロサイズのダイヤモンド電極の作製に成功した。ダイヤモンド表面の酸化により妨害物質の影響を受けずに,実際にマウスの脳において脳内神経伝達物質であるドーパミンを高感度選択的に測定可能であった。さらに電気刺激に伴い神経から放出されるドーパミンの検出にも成功しており,生体微量成分の検出に有用であることが示された。

【E1013】  

ダイヤモンドマイクロ電極による脳内ドーパミンのin vivo測定

 (慶大理工1・順天堂大医2・KAST3)○栄長泰明1・鈴木あかね1・吉見建二2・藤嶋昭3・北澤茂2
 [連絡者:栄長泰明、電話:045-566-1704]

 近年、ホウ素をドープした導電性をもつダイヤモンド電極は、従来の電極材料にはない優れた特性をもつ電極材料としての注目が高まっている。
 材料として極めて安定であるという特性に加え、電位窓が広い、バックグラウンド電流が小さいという優れた電気化学特性を生かして、特に、血液中、尿中の生体関連物質、あるいは、環境中での微量金属をはじめとする汚染物質等の高感度微量分析への応用研究開発が盛んである。

図1 ダイヤモンドマイクロ電極

 さらに、このダイヤモンド電極をマイクロサイズで作製することが可能になれば、in vivo測定をはじめ、センサーの小型化、高感度化も期待できるため、実用に供する電極形態として注目されている。そこで本研究では、タングステンワイヤ上にダイヤモンドを堆積させることにより、ダイヤモンドマイクロ電極を作製することを試み、実際に脳内での測定が可能であるサイズ(直径5μm)の電極作製に成功した(図1)。

図2 マウス脳内ドーパミンのin vivo測定

 実際にマウスの脳内で、脳内神経伝達物質であるドーパミンをin vivoで測定することを試みた(図2)。特にダイヤモンドの表面を制御(表面酸化)することにより、電気化学的に妨害物質となるアスコルビン酸との電位依存性の違いを出すことにも成功し、選択的にドーパミンを高感度に測定できることも分かった。次に、ドーパミン作動性ニューロンに電気刺激を与えることで、放出されるドーパミンを測定したところ、非常に安定した電流応答を得ることができた(図3)。また、数時間脳内に挿入した状態で測定を行っても劣化は見られず、ダイヤモンドマイクロ電極の有用性が示された。

図3 電気刺激に伴う電流応答
(ドーパミンの放出を示す)