◆医療・生命◆   喫煙者の呼気からホルムアルデヒドを検出

 ヒトの呼気には,200を超える揮発性物質が含まれているため,健康状態の様々な情報源となり得る。呼気は痛みを伴わずに得られる試料であることから,呼気分析は非侵襲分析として注目されている。しかし,呼気ホルムアルデヒド(HCHO)の定量法は,これまでほとんど報告が無かった。本研究では, HCHO ガスの自動計測法を開発し,呼気分析に応用した。喫煙家の喫煙直後の呼気からは,平常時の1.5倍の HCHO が約 25 分間にわたり検出された。本法は,呼気 HCHO 濃度と喫煙,飲食,または疾病との因果関係の解明に役立つかもしれない。

【D1002】  

呼気ホルムアルデヒドの自動分析

(愛知工大) ○上田実・手嶋紀雄・酒井忠雄
[連絡先:酒井忠雄,電話:0565-48-8121]

 痛みなどの苦痛を伴わない検査法として非侵襲検査法が注目されており、呼気分析はその代表的な例といえる。生命活動で無意識に排出されている呼気には数多くの化学物質が含まれており、その中には、特定の疾病と関連があることも知られている。例えば、糖尿病患者の呼気には、疾病のない人と比べて高い濃度のアセトンが含まれているといわれている。このように、呼気に含まれる特定の化学物質を分析することは、健康状態の把握に利用できる。本研究では、フローインジェクション分析(FIA)法を、呼気分析に応用し、呼気に含まれるホルムアルデヒドの定量を試みた。ガス拡散スクラバーを利用するガス捕集システムと、ホルムアルデヒドを検出するFIAシステムを組み合わせることにより、呼気に含まれるホルムアルデヒドを数分間隔で分析することができる。この分析システムは、分析に必要な操作が全て自動化されており、手動操作や高度な技術を必要としない特徴を有している。被験者には、写真のようにマスクをして、しばらく座ってもらうだけである。ガス拡散スクラバーは、気体透過性の膜を利用したガス捕集ツールで効率よく呼気ホルムアルデヒドを水に吸収させることができる。呼気はエアポンプによりガス拡散スクラバーに導入され、呼気ホルムアルデヒドが水に捕集濃縮される。この試料水をFIAシステムに導入し、呼気ホルムアルデヒドを定量する。ボランティアの呼気分析に応用したところ、5.8〜11.8 ppbvのホルムアルデヒドを検出した。また、喫煙直後の呼気では、喫煙前より約1.5倍の濃度のホルムアルデヒドが約25分間にわたり検出され、喫煙による呼気中のホルムアルデヒドの濃度上昇が確認されたが、飲料、食品の摂取後との関連にも発展できると考えている。