◆医療・生命◆    生活習慣病を予防する血中の植物性ステロールをはかる

 植物性ステロールはごまや大豆等に含まれており、コレステロールと類似構造をもち、コレステロールの腸管からの吸収を抑制するため、脳梗塞などの生活習慣病の予防になるとされている。今回、血中の植物性ステロールであるカンペステロール、スチグマステロール、β-シトステロールを固相抽出法とガスクロマトグラフィー/質量分析法により高感度で分析することができた。また、ヒト血中の植物ステロールは0.4 3.8 μMであった。今後、本法は食事やサプリメントなどの投与による血中の動態解明に役立つと思われる。

【F1015】        血清中植物性ステロールの高感度定量法の開発

(日薬大)○久保 光志, 荒井 健介, 吉村 吉博
[連絡者:吉村 吉博 , 電話:048-721-6286]

 植物性ステロールは、植物に含まれている脂質の総称で、特にごまや大豆などに多く含まれている。その植物性ステロールは、化学構造がコレステロールに類似しており、ヒトが摂取すると十二指腸においてコレステロールと競合的に働き、コレステロールの吸収を抑制する働きがあるため、コレステロールによる動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病の予防に期待され、その中でもβ-シトステロールなどが多くの食品やサプリメントなどに応用されている。
 食品中の植物性ステロールの量は多く存在するため比較的定量しやすいが、ヒト血清中に存在する微量の植物性ステロールを定量する方法は困難で、摂取後に体内でどのような作用や効果がもたらされるかははっきりと解明されていない。
 今回、ヒト血清中に含まれる植物性ステロール(カンペステロール、スチグマステロール、β-シトステロール)を高感度に測定する方法として、植物性ステロールを誘導体化した後、ガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)を用いて検討した。また、多検体測定を行うことを考慮して、作業時間の短縮と操作の簡便性を目的として固相抽出を用いる前処理法も検討した。内標準物質として3,4-12C2コレステロールを用いて3種類の植物性ステロールを測定した。その結果、0.4〜30 ?Mで定量ができ、検出限界は、0.2 ?Mであった。さらに、ヒト血清(n=10)を用いた植物性ステロールの平均濃度は、カンペステロールが3.8 ?M、スチグマステロールが0.4 ?M及びβ-シトステロールが3.3 ?Mであった。従って、血清中の微量植物性ステロールを定量することにより、生体内での植物性ステロールと生活習慣病の関連性を解明できると期待される。