◆医療・生命◆ ダイヤモンド電極による食肉中コレステロールの簡便・高精度な測定法の開発

 血中コレステロール値が高いと高血圧、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞を発症する可能性が高く、これらの予防・治療においてコレステロールを多く含む食品を摂りすぎないことが重要である。そこで、食品中コレステロールを精度良く簡便に測定するためボロンドープダイヤモンド電極を用いた電気化学検出・高速液体クロマトグラフィーを開発した。前処理方法を検討し食肉中のコレステロールを本法で測定したところ、豚ロース<牛ひき肉<ラム肉の順にコレステロール値が高いことがわかった。本法はわずか1 mg程度の微量な試料でも分析可能であった。

【F1006】  ボロンドープダイヤモンド電極を用いた電気化学検出HPLCによる
               コレステロールの定量法の開発

(東京薬大薬) ○小谷 明・袴田秀樹・楠 文代
[連絡者: 楠 文代,電話: 042-676-4549]

 血中コレステロール値が高いと,高血圧,動脈硬化,脳梗塞,心筋梗塞を発症する可能性が高いので,これらの病気の予防・治療においてコレステロールを多く含む食品を摂りすぎないことは,非常に重要である。牛や豚,鶏などの肉に含まれるコレステロールや脂肪の量は,部位によって異なり,脂身や内臓,鶏皮や鶏の黄色い脂肪部分などには,コレステロールや脂肪が多量に含まれていると言われている。従って,日常的に食事から摂取したコレステロールの量を把握することは重要であり,コレステロールを簡便かつ正確に測定する方法は,食品分析において必須である。
 本研究では,ボロンドープダイヤモンド(boron-doped diamond; BDD)電極を用いた
電気化学検出-高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるコレステロールの高感度定量法を開発した。さらに,前処理方法を検討した後,食肉中のコレステロールの定量へと応用した。
 食肉の標準試料中(National Institute of Standards and Technology 製)のコレステロールの定量を行い,本法の真度と精度について評価した。標準試料中のコレステロール量の認証値は,750±72 μg/gと記載されている。これに対し,本法の分析結果は747±22 μg/gであり,データのバラツキも少ないことが分かった。牛ひき肉,豚ロース肉,ラム肉(肩)中のコレステロールの定量を行った結果,右の図に示すように豚ロース<牛ひき肉<ラム肉の順でコレステロール量が多いことが分かった。本法は,わずか1 mg程度の微量試料で分析可能であり,簡便かつ精度のよい食肉中コレステロールの測定法であった。