◆医療・生命◆   食中毒の原因となるヒスタミンの簡便かつ迅速な定量法の開発

 アレルギー様食中毒の原因となる食品中のヒスタミンを迅速に定量する方法を開発した。ヒスタミンに新規ヒスタミンオキシダーゼを反応させ、発生した過酸化水素とトリンダー試薬との反応により生成した紫色物質の吸光度を連続的に流れ分析する。本法では迅速に食品中のヒスタミンを定量することができる。本法を市販魚醤中のヒスタミン定量に適用した。前処理操作が不要で簡便であるので、魚醤試料を希釈のみで測定可能であった。分析時間も1検体3分と従来法の10倍以上の改善となった。

【P2072】  固定化ヒスタミンオキシダーゼを用いた吸光検出FIAによる
                食品中のヒスタミンの定量

(山梨大院)○渡辺 瞬・橘 正樹・谷 和江・小泉 均・鈴木保任・木羽信敏
(神奈川工科大)松尾謙一・松本邦男
[連絡者:木羽信敏 電話:055-220-8568]

 我国では、毎年のように赤身魚であるサバ科の魚類に由来する食品が原因で、じん麻疹、腹痛、下痢、血圧降下などのアレルギー様食中毒が発生している。この食中毒の誘因物質は食品中に含まれるヒスタミンによるものであり、このような食中毒をヒスタミン中毒と呼んでいる。ヒスタミンは食中毒の原因となる「腐敗アミン」の一種であり、その中でも、臭いや目視では分からない初期腐敗の段階で生成し、冷凍や加熱処理しても消失しない。ヒスタミンは、魚肉の加工食品、畜肉とその製品などのタンパク質が多く含まれる食材の初期腐敗時やチーズ、ワイン、魚醤などの発酵食品中にも高い濃度で存在しているため、食品衛生や品質管理の手法であるHACCPにおいて、ヒスタミンは危害原因物質の一つに挙げられている。このようなことから、食材・食品中のヒスタミンを測定することはそれらの衛生管理において必要不可欠である。これまでのヒスタミン測定法は操作が煩雑で測定に時間が掛かったので現場での検査に用いることが出来なかった。
本研究では、ヒスタミンに対して基質特異性が高い新規ヒスタミンオキシダーゼとヒスタミンとを反応させ、発生した過酸化水素とトリンダー試薬との反応により生成した紫色物質の吸光度を、連続流れ系で、測定する方法を開発した。酵素反応をより迅速に進めるため、酵素を樹脂ビーズに固定化し、細管(内径1mm)に充填してリアクターとして用いた。本法を市販魚醤中のヒスタミンの定量に適用した。この測定法では、前処理などの操作が不要で、魚醤試料を希釈しただけで、直ちに測定出来る。1検体あたり約3分間で測定が可能であった。従来の測定法より簡便で、10倍以上の分析速度で分析が可能であった。開発したフローインジェクションシステムを右図に示す。