◆医療・生命◆   大腸菌数を色で判別して食品製造現場に安心・安全をもたらす

 食品製造現場においては大腸菌などの衛生検査は細菌培養によるコロニー数の計測によることが多いが、一日以上の培養時間を要するため検査結果を製造工程に反映させることが出来ない問題がある。本研究では、菌内成分であるアデノシン三リン酸を、酵素反応によってその代謝物を呈色させることによって迅速に分析することに成功した。更に試薬を工夫することで、所定の濃度の上下で色調を変化させることも可能であり、濃淡ではない明確な目視でのスクリーニングが実現した。大腸菌を添加した市販飲料でも良好な結果を得ており、今後キット化することで現場での実用化が期待される。

【B2002*】  キシレノールオレンジ-鉄錯体を用いるATPの比色分析法による食品中の大腸菌検出

(北大院工)○石田晃彦・山田泰子・谷 博文・上舘民夫
[連絡者:石田晃彦,電話:011-706-6746]

 近年,食品製造現場での衛生管理に対する関心が高まっている。衛生検査において細菌を検査する場合,細菌を培養してコロニー数を数える方法が用いられている。しかし,この方法は一日以上の培養を要するため,検査結果を製造工程に反映させることは困難であった。製造現場では食品が細菌数に関する基準を満たしているかいないかを簡便にスクリーニングする方法が求められている。その際,試料を呈色させて,それを目視する方法が簡便である。そこで,我々は,菌内成分であるアデノシン三リン酸(ATP)が菌数の指標として利用できることに着目し,約1時間で結果が得られるATPの目視測定法を開発した。対象とするATP濃度は1 nmol/l以下と呈色させたとしても色が認められないほど低濃度であるが,酵素反応によって微量のATPから増幅させたピルビン酸を呈色させるため,本法では明瞭な呈色が得られる。これまでこのように極微量のATPに対して有効な目視分析法はなかった。本法はさらに標記の錯体を利用することにより,所定のATP濃度を境界に下であれば黄,上であれば紫に呈色するという特徴をもつ。濃淡ではなく,色別で呈色させて判定しやすくしている点が本法の特色である。また,色変化の境界となるATP濃度を変更できるため,検体の種類に応じた基準で色別判定することが可能である。なお,本法では比色計を利用すれば数値データを得ることも可能である。本研究では一部ではあるが大腸菌を添加した市販飲料に本法を適用し良好な結果が得られた。今後は現場で簡便に利用できるようキット化することにより,食品製造現場などでの実用化が期待される。