◆環境・防災◆  活性炭カートリッジで環境水中の親水性有機物を簡単に濃縮
 現在、我々の回りでは様々な化学物質が使われているが、それらの環境中での挙動の解明は、化学物質が環境に与える影響を評価する上で重要である。しかしながら、環境中での化学物質の濃度は非常に低く測定が困難な場合が多い。そこで、本研究では、活性炭カートリッジを用いた濃縮法を開発し、水への溶解性が高い親水性有機化合物の測定を試みた。栃木県内の河川水について測定したところ、水質汚濁が進行している地点では、洗浄剤や溶剤として使用されている物質の濃度が高いことが分かった。今後、親水性有機化合物の水環境における挙動が明らかになるものと期待される。

【P1042】         活性炭カートリッジを用いる固相抽出
         ガスクロマトグラフ質量分析法による河川水中の親水性有機化合物の定量

(宇都宮大工1,栃木県保健環境セ 2)○神野 憲一1,2,清水 得夫1,上原 伸夫1
[連絡者:神野憲一,電話:028-673-9070]

 現在、国内で約十万種の化学物質が様々な用途で使用されており、日常生活に不可欠なものとなっている。しかし、化学物質の生産、使用及び廃棄の仕方次第で、人または生態系に影響を及ぼすことが懸念されている。環境中の化学物質の存在状況を把握することにより、人または生態系に対する化学物質の暴露量の見積り等に活用できる。我々は人または水生生物に対し影響が懸念される化学物質について、水試料中の化学物質の分析方法を検討すると共に、栃木県内の公共用水域における存在状況調査を実施している。

 今回、分析対象とした物質は水への溶解性が高い(親水性)有機化合物のため、一段目に疎水性の妨害物質を吸着するためのC18固相、二段目に親水性の目的物質を吸着する活性炭固相を連結し(図参照)、試料水を通水した。活性炭固相を乾燥後、下段に水分除去用の固相を連結し、ジクロロメタンで溶出した。溶出後、ごく緩やかに窒素を吹き付けて濃縮を行い、GC/MSにより測定した。本法を用いて栃木県内の河川水試料を測定した結果、1,4-ジオキサン及びN,N-ジメチルホルムアミドが検出されたが、エピクロロヒドリン及び2-エトキシエタノールは検出されなかった。1,4-ジオキサンは洗浄剤や溶剤等として、N,N-ジメチルホルムアミドは合成溶媒等として使用されており、水質汚濁が進行している調査地点において濃度が高くなる傾向が見られた。今後、これらの親水性有機化合物の水環境における動態解明も期待できる。