◆環境・防災◆  大気環境微粒子を粒別に測定して健康影響の評価を行う
 大気環境中に浮遊する微粒子の健康被害が懸念されているが,その中でも,特に肺がんや呼吸器疾患の原因物質と考えられているディーゼル排気微粒子(DEP)に注目した. 飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)法を用いてこの微粒子を測定し,一粒一粒から得られる組成情報と形状情報から,その粒子の発生源やその動態を明らかにすることができる.また,この方法により固体試料表面に存在するppmオーダーの極微量成分の分析ができるので,大気環境微粒子による健康影響の評価の基礎データになり得ると思われる.

【D1006】  TOF-SIMSを用いた大気環境中微粒子の粒別測定法に関する研究

(1.東理大理工, 2. 東大環セ) ○ 鈴木 一郎 1,冨安文武乃進2, 二瓶好正1
[連絡者:鈴木健一郎,電話:04-7124-1501]

 私達が生活している空間には様々な目に見えない小さな粒子が浮遊している。近年これらの粒子による汚染の低減が行政上の重要課題として残されている。また、わが国のガンによる死亡統計において、肺ガンが第一位となったことが知られている。この原因は未解明であるが、煙草等による有害有機物の他、大気汚染物質特に、環境微粒子による健康影響が危惧されている。
 この様な背景から、東京都と近接3県はディーゼル排気微粒子(DEP)の排出規制を開始し、1年間で十数から数十パーセントの低減効果を得たと発表した。一方、米国EPAでは、1997年に発表したPM2.5(粒径2.5mm以下の大気環境微粒子)に関する環境基準を2005年度からさらに強化しようとしていると報じられている。以上のように、環境微粒子による大気汚染は、未だ十分な科学的な知見が得られていない現状にある。したがって、環境微粒子に関する知見を集中的かつ重点的に明らかにすることが極めて重要な課題である。
 本研究では、都市大気環境微粒子について特に肺がんや呼吸器疾患の原因と考えられるDEPに注目した。本研究の分析法は、大気環境微粒子の「一粒一粒より得た組成情報や形状情報」を利用して、その粒子の発生起源や動態などを明らかにする。また、TOF-SIMSは固体試料の最表面に存在するppmオーダーの極微量成分を検出することができる。この手法を用いれば、大気環境中微粒子の健康影響評価を行う上で、基礎的なデータを得ることが可能となる。