◆新素材・    コメ一粒における三次元の元素分布を可視化する
 先端技術◆

 最近の環境試料や生体試料の分析では,全元素濃度以外にも試料組織の構造と対応した元素分布に興味が持たれている.本研究では,毛細管を束ねたレンズを用いてμmオーダーに細く集光したX線を試料に照射し,発生した蛍光X線をも同様なレンズを用いて細く絞り特定部位のみを検出する共焦点型蛍光X線分析装置の開発を行なった.装置の深さ分解能は約90μmであった.米試料に応用したところ,米一粒の胚芽部の中におけるカリウム,カルシウム,鉄の3元素について,3次元分布を可視化することに成功し,胚芽部内側から外側に濃度分布があることを確認した.

【D2001】    共焦点型蛍光X線分析装置の開発と三次元元素分析

 (阪市大院工, JST-PRETO) ○中野和彦・辻幸一
[連絡者:中野和彦, 電話 : 06-6605-2164]

 生体・植物試料や大気粉塵などの環境試料の分析において、マイクロメートルオーダー、もしくはそれ以下の領域での分析が一層重要となってきている中、分析試料内部の微小空間における分析、すなわち “ 三次元” の分析が盛んになりつつある。これまで三次元の蛍光X線分析法として、いくつかの方法が報告されているが、近年、特に注目されているのが共焦点型蛍光X線分析である。この方法では、まず一次X線をポリキャピラリーレンズなどでマイクロビームに集光して試料に照射する。このとき検出側のポリキャピラリーレンズの焦点を、照射したマイクロビームの光路中の一点に合わせれば、特定の空間内でのみ発生する蛍光X線を検出することができる。この状態で試料ステージを x-y-z 軸方向に走査すれば、試料を損傷させることなく三 次元の元素分析が可能となる。 本研究では、ポリキャピラリーX線レンズを組み合わせた実験室系での共焦点型蛍光X線分析の開発を行った。10 μm 厚の Au 薄膜を用いて三次元微小部分析における評価を行ったところ、装置の深さ分解能は約 90 μm であった。この共焦点型蛍光X線装置で、米試料の胚芽部に含まれる K, Ca, Fe の 三元素について試料の分析深さを変化させながら元素マッピングを行った結果、分析深さが深くなるにつれて元素分布が胚芽部の内側から外側に移行していくのが確認された。