◆新素材・    環境汚染ガスによる植物のストレス応答機構を解明する
 先端技術◆

 電子スピン共鳴法(ESR)を用いて生きたままの植物のストレス状態を測定すると,植物はさまざまな環境ストレスに応答し,シグナル伝達物質である細胞内カルシウムが関与し,最終的に活性酸素の一種であるスーパーオキシドを生成していることが分かった.今回,本法を用いて環境汚染ガスに暴露された植物中のスーパーオキシドを測定することにより,この植物のストレス度およびストレス機構を解明することが可能となった.この手法を植物の生育分野に応用することにより植物応答メカニズムの解明のみならず,ストレス耐性の強い植物の品種改良にも役立つと思われる.

【P1003】    植物のストレス応答計測のためのスピンプローブESR法の研究

(山形大院理工・山形大学術情報基盤セ1・山形大工2)加藤光平・○伊藤智博1・黒澤秀宏・尾形健明2
[連絡者:尾形健明,電話:0238-26-3135]

 植物は,環境ストレスに対して様々な応答を示す.植物のストレス応答特性を解析することは,ストレスによる障害発生機構の解明や耐性能の評価のために必要である.我々は生きたままESR計測ができるin vivoスピンプローブESR法を用いて,ストレスを負荷した植物のレドックス状態の変動を観察してきた.これまでの研究によって,冷害などを想定した冷却ストレスや光ストレス,大気汚染ガスストレスの応答およびストレス耐性評価が行われてきた.本研究では,スピンプローブESR法を用いて,大気汚染物質を意図した気体と各種植物内シグナル伝達物質との関係を明らかにし,固体レベルで植物ストレス応答機構の解明することのできる測定手法の確立を試みた.

 この研究により,スーパーオキシド(活性酸素の一種)が発生していることが確認された.オゾンが曝露されてから植物内が酸化的雰囲気になりプローブ剤が再酸化されるまでの機構には,細胞外からのカルシウムイオンの流入,および,NADPH酵素系は関与しておらず,細胞内に存在するカルシウムイオンが関与していることが示唆された.この手法を様々な植物の生育分野で応用することによって,環境汚染ガスに対する植物応答機構の解明のみならず,ストレス耐性の強い植物の品種改良にも役立つものと期待される。